01建玉とは:出来高との違い
建玉は、先物やオプションで「建てたまま、まだ決済していない契約」のことです。オプションは必ず買い手と売り手がいるので、建玉1枚は「買い1枚と売り1枚の組」と考えます。日経225オプションの基本は日経225オプションとはで解説しています。
| 出来高 | 建玉(オープンインタレスト) | |
|---|---|---|
| 意味 | その日に成立した取引の枚数 | 決済されずに残っている契約の枚数 |
| 数え方 | 毎日ゼロから数え直す | 前日までの残高に、その日の増減を足す |
| 分かること | その日の売買の活発さ | ポジションがどこに積み上がっているか |
| 満期(SQ)後 | — | その限月の建玉はなくなる |
建玉の増減は、取引の組み合わせで決まります。
- 増える:新しく買う人と、新しく売る人の取引が成立したとき
- 減る:買っていた人の決済売りと、売っていた人の買い戻しが成立したとき
- 変わらない:一方が新規、もう一方が決済のとき(ポジションが人から人へ移っただけ)
つまり出来高が多くても、建玉が増えていなければ「新しいポジションは積み上がっていない」と読めます。逆に、出来高が少なくても建玉がじわじわ増える行使価格は、だれかが継続してポジションを作っている可能性があります。
02行使価格別の建玉の読み方
建玉は、行使価格を縦に並べ、コールとプットを左右に置いた表にすると読みやすくなります。次は読み方を説明するための架空の例です(日経平均が68,000円前後のとき)。
| 行使価格 | プット建玉 | コール建玉 | 読み方の例 |
|---|---|---|---|
| 70,000円 | 200 | 9,500 | 上値の「壁」として意識されやすい |
| 69,000円 | 600 | 4,800 | |
| 68,000円 | 3,100 | 3,300 | 現在値付近(ATM) |
| 67,000円 | 5,200 | 700 | |
| 66,000円 | 10,800 | 150 | 下値の「壁」として意識されやすい |
※ 数字は説明用の架空の値です。実際の建玉はJPXや証券会社の画面で確認してください。
見るポイントは3つです。
- 厚い行使価格を探す:現在値より上はコール、下はプットの建玉が厚い所に注目します。キリのいい価格(1,000円刻みなど)に集まりやすい傾向があります。
- 「壁」になる理由を理解する:厚い建玉の多くは、売り手がいることを意味します。株価がその行使価格に近づくと、売り手は損失を抑えるために先物などでヘッジします。このヘッジの売買が、値動きを止める方向にも、逆に加速させる方向にも働くことがあります。
- コールとプットの偏りを見る:全体でプットの建玉が多ければ下への備え(保険)が多く、コールが多ければ上への備えや上値を抑える売りが多い、という状態です。ただし偏りは「警戒の向き」であって、方向の答えではありません。
なお、日経225オプション(ラージ)と日経225ミニオプションは別の商品なので、建玉も別々に集計されます。1枚の大きさも10倍違うため、枚数をそのまま足し算しないよう注意します。
03建玉の推移の見方
建玉は1日の数字より、何日かの変化を見る方が情報が多くなります。前日からの増減を行使価格ごとに記録しておくと、次のような動きが見えてきます。
- 遠い行使価格から近い行使価格へ移る:たとえば上値のコール建玉が、遠い所で減って現在値に近い所で増えたなら、上値の壁が下がってきたと読めます。
- 急落・急騰の直後に増える:あわてて保険を買う動きか、高くなったプレミアムを売る動きか、どちらの可能性もあります。IVが上がっていれば買いが優勢、下がっていれば売りが優勢と考える手がかりになります。
- SQが近づくと減る:満期が近い限月では決済や次の限月への乗り換え(ロールオーバー)で建玉が減ります。期近だけでなく、次の限月の建玉も一緒に見ます。
04JPX・証券会社での確認方法
建玉や手口のデータは、日本取引所グループ(JPX)のサイトで無料で公表されています。掲載の時刻は2026年10月時点のJPXの案内です。
| データ | JPXのページ | 更新 |
|---|---|---|
| デリバティブ建玉残高表(Excel) | マーケット情報 › デリバティブ › 当日取引高等 | 毎営業日 20:00掲載予定 |
| 手口上位一覧(取引参加者別取引高) | デリバティブ › 取引参加者別取引高 | 毎営業日 17:45目処(ナイト・日中、立会・J-NET別) |
| 取引参加者別建玉残高一覧 | デリバティブ › 取引参加者別建玉残高一覧 | 週1回、毎週第1営業日 15:30目途(前週末の日中取引終了時点) |
出所:日本取引所グループ「当日取引高等」「取引参加者別取引高」「取引参加者別建玉残高一覧」(2026年10月時点)。祝日取引の日はデータの扱いが変わります。
毎日の確認は、次の順番が分かりやすいです。
- JPXの「当日取引高等」からその日のデリバティブ建玉残高表をダウンロードし、日経225オプションの該当する限月の建玉を確認する。
- 行使価格ごとにコール・プットの建玉と前日比を表に書き写し、厚い所と増えた所に印をつける。
- 「取引参加者別取引高」で、その日にどの証券会社が大きく売買したかを確認する。
- 週に一度、「取引参加者別建玉残高一覧」で、証券会社ごとの残高の変化を確認する。
証券会社の取引ツールでも建玉を確認できます。たとえばSBI証券のHYPER SBI 2では、選んだ銘柄の建玉が表示されるほか、「会員別建玉」タブで直近の限月のATM付近について、証券会社別の売り買い差引建玉(上位15社)を確認できます(同社ヘルプ、2026年10月時点)。
05建玉と手口を組み合わせる
建玉の数字だけでは「買いが増えたのか、売りが増えたのか」は分かりません。建玉1枚には必ず買い手と売り手がいるからです。そこで手口(取引参加者別取引高)を重ねて、だれがその建玉を作ったのかを推定します。
- 建玉が増えた行使価格で、特定の海外証券が大きく売買していれば、その会社の顧客がポジションを作った可能性が高くなります。
- 手口は「取引高」なので、新規か決済かは区別されません。翌日以降の建玉の増減とあわせて判断します。
- オプションだけでなく、先物の手口と建玉も一緒に見ます。先物の買いとコールの売りの組み合わせのように、両方を見ないと意味が分からないポジションがあるためです。先物の手口の見方は日経平均先物とはで解説しています。
06熊谷の見方:建玉は「恐れる場所」を示す
私は日経225オプションの建玉と手口を毎営業日集計し、SQ値の分析レポートを作っています。その答え合わせの中で整理してきたことを紹介します。
- 建玉は、参加者が恐れている場所を示す。相場の行き先ではない。8月限では、安値をつけた直後に建玉が増え、IVも上がったことから「下に警戒」と読みました。ところがSQ値は69,702円で、事前に本命と見ていた価格帯とは約4,700円の差がつきました(8月限SQ振り返り)。
- 建玉は「枚数」と「効き目」をセットで見る。8月限で見落としたのは、相場が上がったことで、下に積まれたプットという保険の効き目が下がっていた点でした。枚数が多くても、現在値から遠ざかった保険は相場を支える力を失っていきます。
- 建玉の移動とIVの変化で、売り手の動きを読む。8月17日の週は、遠い上値にあったコールの建玉が現在値に近い行使価格へ移り、IVが下がっていたことから、売り手が上値の蓋を下げてきたと解釈しました。実際、終値は67,000円に届きませんでした(8/17週 OP建玉分析)。
- 判断の基準は先に書いておく。同じ週、事前に決めておいた判定条件のうち1つは、IVの変化の読み方を誤っていました。基準を前もって書いていたからこそ、その食い違いに気づけました。いまは「この見立てが崩れる条件」も先に記録するようにしています。
また私は、中期の判断にはチャートだけでなく建玉も使っています。プットの建玉が優勢なままなら、プロはまだ下の保険を外していない、と読みます(SQ値を知らないと損をする理由)。
建玉とは別に、真の日経VIから計算した次回SQまでの想定レンジ(1σ・2σ)と、過去の答え合わせはカブラボ マーケットデータで毎営業日判定しています。建玉で「どこが意識されているか」、想定レンジで「統計的にどこまで動きうるか」を分けて見ると、SQ前の状況を整理しやすくなります。
07よくある誤読
| よくある読み方 | 実際には |
|---|---|
| 建玉が厚い行使価格に、SQ値は寄っていく | 寄ることもありますが、決まりではありません。厚い建玉は警戒の表れで、行き先の予告ではありません。 |
| プットの建玉が多い=下がる | 保険としての買いと、下がらないと見た売りの両方がありえます。だれが建てたかは手口とIVで確かめます。 |
| 建玉が増えた=買いが増えた | 建玉には必ず買い手と売り手がいます。増えたのは「新しいポジション」で、買いか売りかは分かりません。 |
| 壁は必ず守られる | 大きなニュースや急な値動きで壁を突き抜けると、売り手のヘッジで値動きがかえって加速することがあります。 |
| 1日の数字で判断する | SQ前の決済や乗り換えで建玉は大きく変わります。数日の推移と、次の限月もあわせて見ます。 |
08よくある質問
01オプションの建玉とは何ですか?
建玉(オープンインタレスト)とは、まだ決済されずに残っているオプションの契約の数です。建玉1枚には必ず買い手と売り手がいます。日経225オプションでは行使価格ごと・コールとプットごとに建玉があり、どの価格帯にポジションが積み上がっているかが分かります。
02建玉と出来高の違いは何ですか?
出来高はその日に成立した取引の枚数で、毎日ゼロから数え直します。建玉は決済されずに残っている契約の枚数で、前日までの残高にその日の増減が加わります。出来高が多くても、新規と決済の取引ばかりなら建玉は増えません。
03建玉が厚い行使価格は、なぜ「壁」と呼ばれるのですか?
厚い建玉の多くには売り手がいて、株価がその行使価格に近づくと、売り手は先物などで損失を抑えるヘッジをします。このヘッジの売買が値動きを止める方向に働くことがあるため、節目として意識されます。ただし壁を突き抜けると、ヘッジが逆に値動きを加速させることもあります。
04建玉が厚い行使価格にSQ値は近づきますか?
近づくこともありますが、決まりではありません。建玉は市場の参加者が恐れている場所や備えている場所を示すもので、相場の行き先そのものではありません。建玉の推移、手口、IVの変化をあわせて確認することが大切です。
05日経225オプションの建玉はどこで確認できますか?
日本取引所グループ(JPX)のサイトで無料で公表されています。2026年10月時点では、「当日取引高等」のデリバティブ建玉残高表(Excel)が毎営業日20:00に掲載予定で、証券会社別の取引高(手口)は毎営業日17:45目処、証券会社別の建玉残高は週1回公表されます。証券会社の取引ツールでも確認できます。
06プットの建玉が多いと相場は下がりますか?
プットの建玉が多いことは、下への備えが多いことを示しますが、下がることを意味するわけではありません。保険としてプットを買った人と、下がらないと見てプットを売った人の両方がいるためです。だれが建てたかは手口で、買いと売りのどちらが優勢かはIVの変化で手がかりを得ます。