01NT倍率の計算方法
計算式はシンプルです。
NTの「N」は日経平均(Nikkei)、「T」はTOPIXの頭文字です。2026年10月22日の終値で計算すると次のとおりです。
NT倍率が15.74倍ということは、「日経平均はTOPIXの約15.7倍の水準にある」という意味です。数字そのものより、この比率が上がっているのか、下がっているのかを見ることに意味があります。
02日経平均とTOPIXがズレる理由
どちらも「日本株の代表的な指数」ですが、計算の仕方がまったく違います。そのため、同じ日に逆方向へ動くことも珍しくありません。
| 日経平均株価 | TOPIX | |
|---|---|---|
| 対象 | 日本経済新聞社が選ぶ225銘柄 | 東証プライム市場を中心とした約1,700銘柄 |
| 計算方法 | 株価の平均(株価平均型) | 時価総額で重み付け(時価総額加重型) |
| 影響が大きい銘柄 | 株価の高い「値がさ株」(ファーストリテイリング、東京エレクトロン、アドバンテスト、ソフトバンクグループなど) | 時価総額の大きい企業(銀行、自動車、商社など) |
| 性格 | 半導体・ハイテクの値動きが強く出る | 日本株全体の動きに近い |
たとえば2026年6月1日は、日経平均が前日比で約0.9%上がった一方、TOPIXは約0.42%下がりました。この日はソフトバンクグループ1銘柄だけで日経平均を約844円押し上げています。「日経平均が上がった」ことと「日本株が上がった」ことは、必ずしも同じではありません。そのズレを数字にしたものがNT倍率です。
現在の日経平均は値がさの半導体・AI関連株の比重が大きく、「日本の半導体指数」に近い性格を持っています。そのため、NT倍率が大きく動くきっかけは、半導体・AI関連に資金が向かうか離れるかであることが多くなっています。
03NT倍率の推移(2010年〜2026年)
日経平均とTOPIXの月末終値から計算したNT倍率の推移です。
| 時点 | 日経平均 | TOPIX | NT倍率 |
|---|---|---|---|
| 2010年末 | 10,229 | 898.80 | 11.38倍 |
| 2011年末 | 8,455 | 728.61 | 11.60倍 |
| 2012年末 | 10,395 | 859.80 | 12.09倍 |
| 2013年末 | 16,291 | 1,302.29 | 12.51倍 |
| 2014年末 | 17,451 | 1,407.51 | 12.40倍 |
| 2015年末 | 19,034 | 1,547.30 | 12.30倍 |
| 2016年末 | 19,114 | 1,518.61 | 12.59倍 |
| 2017年末 | 22,765 | 1,817.56 | 12.52倍 |
| 2018年末 | 20,015 | 1,494.09 | 13.40倍 |
| 2019年末 | 23,657 | 1,721.36 | 13.74倍 |
| 2020年末 | 27,444 | 1,804.68 | 15.21倍 |
| 2021年末 | 28,792 | 1,992.33 | 14.45倍 |
| 2022年末 | 26,094 | 1,891.71 | 13.79倍 |
| 2023年末 | 33,464 | 2,366.39 | 14.14倍 |
| 2024年末 | 39,894 | 2,784.92 | 14.33倍 |
| 2025年末 | 50,339 | 3,408.97 | 14.77倍 |
| 2026年10月22日 | 62,908 | 3,997.50 | 15.74倍 |
| 月 | NT倍率 |
|---|---|
| 1月末 | 14.95倍 |
| 2月末 | 14.94倍 |
| 3月末 | 14.60倍 |
| 4月末 | 15.91倍 |
| 5月末 | 16.76倍 |
| 6月末 | 17.54倍 |
| 7月末 | 16.08倍 |
| 8月末 | 15.95倍 |
| 9月末 | 16.25倍 |
| 10月(22日) | 15.74倍 |
ポイントは3つです。
- 長期的には上昇傾向:2010年末の11.38倍から、2020年末には15.21倍まで上がりました。値がさのハイテク株が日経平均を押し上げてきたためです。
- 2021〜2022年は低下:金利上昇でグロース株・ハイテク株が売られ、銀行などバリュー株が強かった局面では、NT倍率は13倍台まで下がりました。
- 2026年は大きく振れている:AI・半導体株の急騰で4月に初めて16倍台に乗り(月末は15.91倍)、6月末には17.54倍まで上がりました。7月以降は16倍前後まで戻しています。
※ 「何倍なら高い・低い」という固定の基準はありません。長期では水準そのものが上がってきたため、直近の推移の中で行き過ぎていないかを見る方が実用的です。
04NT倍率の見方と相場との関係
日経平均がTOPIXより強い。値がさ株・半導体株主導の相場。日経平均の上昇が「日本株全体の上昇」とは限らない。
TOPIXが日経平均より強い。銀行・自動車・商社など大型株全体が買われている、または半導体株が売られている。
私(熊谷)が毎日の相場解説の中で繰り返し確認してきた傾向は次のとおりです。いずれも「そうなりやすい」という経験則で、必ずそうなるわけではありません。
- NT倍率が下落方向のときは、まれな例外を除いて、相場全体は強くない傾向がある。
- NT倍率が下がっている中での株高は、ショートカバー(売り方の買い戻し)主導であることが多く、長続きしないことがある。
- 日経平均だけが突出して上がり、NT倍率が大きく歪んだときは、いずれ巻き戻されるものとして見ておく。
- 単一銘柄の決算でNT倍率が大きく動いたときは、その効果が剥落したときに逆方向へ振れるリスクを警戒する。
- NT倍率・グロースバリュー指数・SOX(米半導体株指数)は連動しやすく、どれか1つが先に向きを変えることが多い。
つまりNT倍率は、トレードに使わない人にとっても「今の上昇(下落)は相場全体のものか、一部の銘柄のものか」を見分ける物差しになります。
05NT倍率トレードの仕組み
NT倍率トレードは、日経平均先物とTOPIX先物を、金額をそろえて逆向きに同時に持つ取引です。
日経平均先物を買い、TOPIX先物を売る。NT倍率が上がると利益。
日経平均先物を売り、TOPIX先物を買う。NT倍率が下がると利益。
日経平均とTOPIXは大きな流れでは同じ方向に動くため、片方の買いともう片方の売りで、相場全体の上げ下げの影響はほぼ打ち消し合います。残るのは「どちらが相対的に強いか」の部分だけです。
金額をそろえる:熊谷の運用例
2つの先物は1枚あたりの金額が違うため、枚数ではなく金額をそろえます。今の株価水準では、私は次の組み合わせで運用しています。
| 銘柄 | 取引単位 | 枚数 | 金額の目安(10/22終値) |
|---|---|---|---|
| 日経225マイクロ先物 | 日経平均 × 10 | 6枚 | 約377万円 |
| TOPIXミニ先物 | TOPIX × 1,000 | 1枚 | 約400万円 |
金額がちょうどそろう日経225マイクロ先物の枚数は、TOPIX×1,000÷(日経平均×10)、つまり100÷NT倍率で求められます。NT倍率が15.74倍なら約6.4枚なので、6枚がいちばん近くなります。NT倍率がおよそ15.4倍を下回ると7枚の方が近くなるので、NT倍率の水準が大きく変わったら枚数を見直します。
証拠金が少なくて済む
同じ証券会社で両建てすると、2つのポジションのリスクが相殺されるため、必要な証拠金は片方だけを持つ場合より大幅に小さくなります。2026年10月23日時点の証拠金シミュレーションでは、マイクロ6枚の買いだけなら約25.3万円、TOPIXミニ1枚の売りだけなら17.5万円ですが、両方を持つと約10.1万円まで下がりました。ただし注文を出す瞬間はそれぞれの証拠金が必要になるため、口座には40〜45万円程度を用意しておく必要があります。証拠金は相場の水準や変動で変わるので、必ず最新の金額を証券会社で確認してください。
06NT倍率トレードの強みと注意点
強み1:見るべきものが大きく減る
日経平均の上げ下げを当てるには、米国の金利、為替、企業決算、地政学リスク、需給など、無数の材料を読まなければなりません。NT倍率トレードでは、これらの「日本株全体に効く材料」は両建ての中で打ち消し合います。いま見るべきなのは、主に半導体・AI関連が強いか弱いかです。
強み2:身構えるべき日が事前に分かる
NT倍率が大きく動くきっかけは、半導体大手の決算など、ある程度事前に分かるイベントに限られやすい傾向があります。結果が読めないイベントの前はいったん決済し、結果を見てから入り直す、という予定を立てやすいのも利点です。
注意点
- 「両建てだから方向を当てなくていい」は誤解です。日経平均とTOPIXのどちらが強くなるかは当てる必要があり、外せば損失が出ます。
- レンジ相場では勝てても利益が小さく、トレンドが出たときに大きく取る戦術です。勝率より、1回の利益を1回の損失の1.5倍程度にする設計が大事だと考えています(勝率は55%程度で十分)。
- SQ(特別清算指数の算出日)が近い限月で建てると、途中で決済を迫られることがあります。SQまで余裕のある限月を選びます。
- 先物取引は、証拠金を上回る損失が出る可能性がある取引です。
どのタイミングで建て、どこで決済・途転するかの具体的なルール(短期のα戦術と中期のβ戦術)は、電子書籍『NT倍率大作戦』で、過去の検証データとともにすべて解説しています。
07よくある質問
01NT倍率はどうやって計算しますか?
日経平均株価をTOPIX(東証株価指数)で割って求めます。たとえば2026年10月22日の終値は日経平均62,908円・TOPIX 3,997.50ポイントなので、62,908÷3,997.50≒15.74倍です。NTのNは日経平均(Nikkei)、TはTOPIXの頭文字です。
02NT倍率は何倍なら高い・低いと言えますか?
固定の基準はありません。月末値で見ると、2010年代前半は11〜12倍台、2010年代後半は12〜13倍台、2020年以降は14〜15倍台が中心で、2026年には16〜17倍台まで上がりました。長期的には上昇傾向が続いているため、「何倍だから高い」と水準で決めつけるより、直近の推移の中で行き過ぎていないかを見る方が実用的です。
03NTロング・NTショートとは何ですか?
NTロングは「日経平均先物を買い、TOPIX先物を売る」組み合わせで、NT倍率が上がる(日経平均の方が相対的に強くなる)と利益になります。NTショートはその逆で「日経平均先物を売り、TOPIX先物を買う」組み合わせです。どちらも、両指数の「差」の変化を取りにいくポジションです。
04日経平均が上がれば、NT倍率トレードは儲かりますか?
いいえ。NT倍率トレードの損益を決めるのは日経平均の上げ下げではなく、日経平均とTOPIXの「差」です。日経平均が上がってもTOPIXが同じだけ上がればNT倍率は変わらず、利益は出ません。逆に相場全体が下がる日でも、NT倍率が思った方向に動けば利益になります。
05NT倍率トレードにはいくら必要ですか?
熊谷の運用例は日経225マイクロ先物6枚とTOPIXミニ先物1枚の両建てです(金額がそろう枚数は100÷NT倍率で求められます)。2026年10月23日時点では、両方を持った後の証拠金は約10万円まで下がります。ただし注文を出す瞬間はそれぞれの証拠金(マイクロ6枚で約25万円、TOPIXミニ1枚で17.5万円)が必要になるため、口座には40〜45万円程度を用意しておく必要があります。証拠金は相場の水準や変動で変わるため、必ずご利用の証券会社で最新の金額を確認してください。
06初心者でもNT倍率トレードはできますか?
できます。むしろ見る材料が少ないため、初心者に向いている戦術だと考えています。ただし「両建てだから方向を当てなくていい」わけではなく、日経平均とTOPIXのどちらが強くなるかは当てる必要があり、外せば損失が出ます。先物取引口座が必要で、損失が証拠金を上回る可能性もある取引です。仕組みを理解し、少ない枚数から始めてください。