日経平均が上がった日に、TOPIXが下がっている。この記事では、そんなことがなぜ起きるのかを指数の作りから説明します。あわせて、その差を取りにいくNT倍率という戦術に、初心者にこそ効く強みが2つあることを、6月1日の相場を例に書いていきます。
はじめて聞く言葉もあると思いますが、ひとつずつ噛み砕いていきます。
今年の6月1日、日経平均は前日比で0.9%上がりました。
同じ日のTOPIXは0.42%の下げです。
開きは1.3%以上。どちらも日本株の指数なのに、逆向きに動いた日でした。
ニュースの見出しは「日経平均が最高値を更新」の一行です。もうひとつ流れたのが「ソフトバンクグループ1銘柄で日経平均が844円押し上げられた」という見出しでした。
つまり日経平均が上がったことと、日本株が上がったことは別の話なんですよね。
その差そのものを取りにいく戦術がNT倍率です。昔からある戦術で、機関投資家は普通に使っています。それなのに個人はほとんどやりません。
私はこれを、投資を始めて間もない方にこそ勧めています。精神論ではなく、構造上の強みが2つあるからです。
📊 まず、2つの指数の作りが違います
日経平均は、225銘柄の株価を平均して計算されます。
平均するのは株価そのものです。だから株価が高い銘柄ほど影響が大きくなります。ファーストリテイリングのように4万円、7万円という株価の銘柄ですね。こういう銘柄を値がさ株と呼びます。
半導体も株価1万円以上の銘柄が多いので、ここが大きく売買されると日経平均は揺さぶられます。
一方のTOPIXは、プライム市場のおよそ1,700銘柄を時価総額で加重平均して作ります。
時価総額とは株価×株数のことで、つまり会社の大きさです。会社が大きいほど指数に効くので、TOPIXは市場全体の姿を映します。乱暴に言えば「株式会社日本」がTOPIXだと思ってください。主役は銀行や自動車といった顔ぶれです。
ここまでを表にすると、こうなります。
| 日経平均 | TOPIX | |
|---|---|---|
| 対象 | 225銘柄 | プライム市場のおよそ1,700銘柄 |
| 計算のしかた | 株価そのものを平均 | 時価総額(株価×株数)で加重平均 |
| 効きやすい銘柄 | 値がさ株(ファーストリテイリング、半導体など) | 会社の大きい銘柄(銀行、自動車など) |
| 映すもの | 値がさ株の動き | 市場全体の姿 |
指数に効く銘柄が、両者でまったく違うわけです。
そのため半導体やハイテクの一部にお金が集まると、日経平均だけが上がってTOPIXがついてこない。6月1日がまさにそれでした。
自分の持ち株は下がっているのに、ニュースでは日経平均だけ景気がいい。そういう日です。心当たりのある方も多いのではないでしょうか。
そして、この日経平均をTOPIXで割った値がNT倍率です。NはNikkei、TはTOPIXの頭文字ですね。
今年4月に初めて16倍台へ乗り、6月1日は16.98倍。6月22日にかけては17倍を超えました。少し前までは15倍ちょっとで「日経平均が強い」と言っていた水準です。
⚠️ 先に言うと「方向を当てなくていい」は嘘です
強みの話の前に、ここは正直にお伝えしておきます。
NT倍率を使った戦術では、日経平均を買ってTOPIXを売るという持ち方をします。逆に日経平均を売ってTOPIXを買うこともあります。両方を同時に持つので、両建てと呼びます。
ここでよくある誤解が「両建てだから方向を当てなくていい」というものです。
これは嘘です。
日経平均のほうが強くなるのか、TOPIXのほうが強くなるのか。この差の方向は当てにいく必要があります。外せば普通に損が出ます。
「当てなくていい」と説明されたら、そこは疑ってください。私もそういう言い方はしません。
💡 強み① 見るものがぐっと減ります
そこを踏まえたうえで、1つ目の強みに入ります。
明日の日経平均が上がるか下がるかを当てようとすると、見るものが多すぎます。アメリカの金利。為替。日本企業の決算。地政学リスク。買いと売りのバランス。オプションの持ち高。
全部読んでも当たる保証はありません。それでも読まないと見えない。だから難しいわけです。
ところが日経平均を買ってTOPIXを売る形にすると、日本株全体に効く要因はかなりの部分が打ち消し合います。
たとえば金利が上がって株が売られる日。日経平均もTOPIXも下がります。片方は買い、片方は売りなので、損と得が相殺されて差にはほとんど効きません。
為替も同じです。トランプ氏の発言で日経平均もTOPIXも2%動いた日に、NT倍率だけが横ばい。これは普通に起こります。
残るのは中身の差だけです。
そして今の相場で日経平均だけが強くなる場面は、ほとんどが半導体・AI・メモリのセクターにお金が向かっている時です。
前の晩のSOX(アメリカの半導体株指数)やDRAM(メモリ)の値動きを見て、翌日の日本の半導体がしっかりしそうかを考える。もちろん外れる日もあります。この話を収録した日も、前の晩にSOXが反発したのに朝から日経平均が売られました。
それでも、見るものの数が違いすぎるんですよね。
「明日の日本株は上か下か」という大きな問いを丸ごと捨てて、「半導体が強いか弱いか」だけを見る。 これが、私が初心者に勧める一番の理由です。
勝率の話もしておきます。私は55%で十分だと考えています。10回やって5.5回勝てばいい、という意味です。ただし1回の利益が1回の損失の1.5倍になるように設計する。それができれば、5割5分でも資産は増えていきます。7割8割当てられるという話のほうが、私には嘘に聞こえます。
📅 強み② 身構えるタイミングがはっきりしています
続いて2つ目の強みです。
NT倍率を大きく動かすきっかけは限られています。金利でも為替でもなく、半導体の大きな決算です。
この収録の翌朝はNVIDIAの決算でした。上か下かは決算を見るまで分かりません。それなら一度決済して、結果が出てから入り直せばいいわけです。
何が起きたら危ないのかが、事前に分かる。だから予定が立てられます。ここも、経験が浅いほど助かる強みだと思っています。
🤔 それなのに、やっている人がほとんどいません
ここからが面白いところです。
NT倍率の話をすると、ほとんどの方が「知ってますよ」と言います。でも「じゃあNT倍率でトレードしていますか」と聞くと、ほぼやっていません。
機関投資家は普通に使っているのに、個人はもっと難しい先物の短期売買やFXのデイトレへ向かっていきます。
理由はたぶん、当てた感がないことだと思っています。
方向を当てると、読み勝ったという快感があります。Xにも先出しの投稿が並びますよね。NT倍率にはそれがありません。「NT倍率でがっつり儲かった」という投稿は、ほとんど見かけないんです。
比率が上がった下がったというのは、そもそもイメージしづらいものです。
日経平均が1,000円上がれば、1,000円上がったと分かります。でも同じ日にTOPIXも同じだけ上がっていたら、NT倍率では1円も取れていない。逆に日経平均が100円しか上がらなくても、TOPIXが0.5%下げていればしっかり取れます。
株価の上下と連動しないから、話題にならない。地味だから広がらない。広がらないから成功例も出てこない。そうやって、知られたまま放置されている戦術なんだと思います。
そして今、この戦術はワークしていると私は見ています。以前は狭い範囲で細かく動く時期が長く、方向が続きませんでした。それが去年あたりから、一度方向が出るとまとめて取れるようになっています。
背景はシンプルです。日経平均の構成上、指数がどんどん「日本半導体指数」に近づいているからです。
😌 だから、初心者にこそ勧めます
最後に、数字も並べておきます。
- 2026年はここまで8ヶ月で、ルール通りに売買した場合の計算上のプラスは約120万円
- 実際は入るのが遅れたり、寝ている間にサインが出たりするので、私の実績はそこから2割から2割5分ほど引いた80万円ほど
- 最小単位は、今の水準なら日経マイクロ先物6枚とTOPIXミニ先物1枚(2026年10月時点)
- 両建てなので、建ててしまえば証拠金は10万円前後に収まる
- ただし注文を出す瞬間は相殺される前なので、口座には40万から45万は必要
もちろん儲かる保証はありません。方向を間違えれば、80万円プラスになる戦術は80万円マイナスにもなります。放っておいて勝てる手法など、どこにもないんですよね。
それでも、見るものが少ないこと。身構えるタイミングが事前に分かること。この2つは、経験が浅い人ほどありがたみが大きい強みです。
難しいことを積み上げるより、見るものを減らす。私がこの戦術を勧めるのは、結局そこに理由があります。
相場を読むとき、みなさんはいくつのことを気にしているでしょうか。
もし「見るものが多すぎて疲れている」と感じている方がいれば、X(@J_kumagai)で教えてもらえると嬉しいです。