この記事では、オンラインサロンのプラットフォームをAIで2週間かけて自作した経験から、サロンやECの「胴元ビジネス」がこの先どうなるかを書きます。
中心はウェブとサービスの話で、投資の話は最後に少しだけです。
ウェブサイトの部品としてよく使われるPHPという言語の脆弱性(セキュリティの穴)が大きな話題になり、ブログ作成ツールのWordPressはオワコン(終わったコンテンツ)だという声がまた強まっています。WordPressで飯を食っている人も多いので、反発も大きい。
ただ、サービスは時代とともに入れ替わるものです。WordPressの前にもSix Apart社のMovable Typeなど、いろいろなブログサービスがあって、消えていきました。WordPressも役目を終えていくんだろうと思います。
それはそれとして、今回は別の話です。実際に自分で手を動かして開発したことで、見えたことがあります。
🛠️ 2週間で、サロンのプラットフォームがほぼできた
オンラインサロン「みんなの投資ラボ」は、1年半ほど、現在運用中のサロンプラットフォームの上で運営してきました。そのプラットフォームを諦めて、プラットフォームをAIで全部自作しています。
使っているのはAnthropic社のAI「Claude」で、開発用のClaude Codeと、ほとんどはCoworkという機能です。モデルはOpusです。最初の仕様決めと途中の点検だけ、別のモデルを使いました。
この2週間で、もうほぼ完成しています。
しかもClaudeは100ドルのプランのまま。Opus 5.5が賢くてトークンの消費も少なく、週の利用上限すら使い切らずにここまで来ました。容量いっぱいで我慢した、ということもありません。
😩 既存のサロンプラットフォームを諦めた理由
理由はシンプルで、運営に必要な機能が足りなかったからです。今のプラットフォームに限らず、他の大手サロンプラットフォームも似たり寄ったりです。
投資系だからではありません。一般的なサロン運営に必要な機能、長く続けてもらうための機能がない。2年近く要望を出しても、ひとつも入りませんでした。入ったのはガチャ機能のような、正直どうでもいいものです。
具体的には、こんな状態です。
- 記事の複製ができない。毎週のライブ告知も毎回タブを2枚開いてコピペ
- クリップボードの画像を貼れない。チャートのスクショも一度保存してから添付
- 会員管理はハンドル名だけ。いつ入会したかも、メールアドレスも分からない
- 3か月続けてくれた人に特典を自動で届ける、といった仕組みが作れない
- データやPDFを整理して置いておく場所がない
- 動画はブラウザで見せるだけ。サロンをやめれば、アップした動画も使えなくなる
たとえば継続特典の仕組みは、自作ならこれだけで作れます。
- 会員の入会日をデータとして持つ
- 「3か月で特典A」のように、何か月ごとに何を送るかを決めておく
- 特典のデジタルコンテンツを自分のクラウドに置く
- 期間が来たら、リンク付きのメールが自動で届く
入会日もメールアドレスも分からない既存のプラットフォームでは、これができません。
これは私の感想ですが、社内に数百人規模の有料サロンを自分で運営した人がいないんだと思います。運営していれば、すぐ気づくことばかりだからです。
もうひとつは開発の構造です。外注で機能をひとつ足すたびに、仕様を詰めて見積もりを取り、数百万から1000万円という金額が出てくる。それでは簡単に機能は増えません。
これまでは、それでも仕方がありませんでした。自分で開発すれば膨大な時間がかかり、その間にコンテンツを作れなくなるからです。既存のプラットフォームから選んで、ある機能の中でやるしかなかった。
💰 8000円で、8000万円分の開発
では、同じものを外注したらいくらかかるのか。いまの機能と、これから入れる予定の機能をまとめて、AIに試算してもらいました。
答えは、期間が12〜15か月。開発者の人月単価が80万〜100万円。私からの修正指示がすでに50回を超えている点も加味すると、中小の開発会社で5000万〜7000万円、大手のシステム開発会社なら8000万〜1億円。サーバー代と保守は別です。
一方、サーバーはCloudflareというクラウドサービスで、開発中は無料です。無料のままだとデータベースの読み出しが上限を超えた瞬間に1日ほど止まるので、公開時は月5ドルのプランにします。運用費はそれだけです。保守もAIに「直して」と言えば済みます。
Claudeの100ドルプランは月1万6000円ほど。2週間ならざっくり8000円です。私の工数を置いておけば、8000円で8000万円分の開発ができた計算です。
しかも私は、動画を作るなど普段の作業をしながら、空き時間に裏でAIが進めた結果を確認していただけです。
比べると、こうなります。
| 項目 | 外注した場合(AIの試算) | AIで自作した場合 |
|---|---|---|
| 期間 | 12〜15か月 | 約2週間 |
| 開発費 | 中小の開発会社で5000万〜7000万円/大手なら8000万〜1億円 | 約8000円(Claudeの100ドルプラン2週間分) |
| サーバー | 別途 | 開発中は無料、公開後は月5ドル |
| 保守 | 別途 | AIに「直して」と頼む |
自分でも3か月はかかると思っていました。仕様さえ決まれば、AIの開発速度は異常に速いです。
🧭 オワコンになるのは「胴元ビジネス」
ここからが、この記事でいちばん伝えたいことです。
ECサイトやサロンを企業が運営し、集客して手数料をチャリンチャリンと取る。いわゆる胴元ビジネス(場所を貸して手数料を取る商売)は、オワコンになっていくと思います。すぐにではありません。
自作すれば自由度が上がり、手数料は半分以下になります。売上の大きい人なら10分の1ほどで、年間1000万円の手数料が浮くこともあり得る。だからできる人から抜けていきます。
プラットフォームそのものが消えるわけではありません。高い手数料を払って使う理由がなくなるんです。稼げる人から独立していき、利益率が下がる。YouTuber事務所で起きたことと同じ構造です。しかもサロンは、マネージャーが売上を伸ばしてくれるわけでもありません。
🎮 差がつくのは、アイデアと経験
誰でも作れるようになると、先に作った人の優位はすぐ消えるのでしょうか。やってみて分かったのは、AIが作れるのは一般的な仕様までだということです。
「こういうものがあったら便利」という気づきは、AIに指示する人間のアイデアやセンス、経験から出てきます。ゲームも同じです。スマホゲームの初期は、業界にいなかった人の作品がすぐ飽きられ、本職が本気で作ったものが勝ちました。
私は投資で30年やってきたので、投資系のサロンに必要なものがたくさん見えていました。今度のプラットフォームでは、質問するとAIが私の全動画と電子書籍のデータベースから答えます。答えにくいものだけ私に回ってくる。これまでは、メールの返信に2〜3日かかることもありました。TradingViewの使い方やサロンの機能のような質問なら、もうマイページですぐ解決できます。
パソコンでもスマホでも見やすいレスポンシブな作りで、楽しく続けてもらう要素や、コンテンツの整理も入れています。決済のクレジット審査も通っているので、できあがり次第、自作のプラットフォームへ引っ越します。来月には、みんなの投資ラボのメンバーにアルファテスターとして触ってもらう予定です。
📉 おわりに:生き残るのは、集客力のある場所
一方で、集客力のある場所は強いままです。YouTubeやX・Instagram・Threadsは、使い勝手が悪くても人が集まります。日本でそれができるのは、noteとBrainくらいだと思います。noteは、自分で集客しなくても誰かがうっかり見つけてくれる可能性がある。Brainも、プロモーションができる人ならECとして生き残るでしょう。
集客力がなく、仕組みだけを貸しているプラットフォームは、人が抜けて人件費が賄えなくなっていく。ライターやデザイナーをつなぐマッチングも、AIに任せればよくなり、売上が立ちにくくなっていきます。株式投資の目線でいえば、プラットフォーム事業が中心の会社は、事業の形を変えない限り厳しいと見ています。新しいスタートアップがこの手のビジネスで勝つのは、ほぼ無理でしょう。
WordPressに限らず、仕組みを貸して手数料を取るだけのサービスは、同じ岐路に立っていると思います。
お金を払って使っているサービスのなかに「自分で作れるのでは」と思うものがあれば、X(@J_kumagai)で教えてもらえると嬉しいです。