01日経VIの定義と計算のもと
日経VIは、正式には「日経平均ボラティリティー・インデックス(日経平均VI)」といいます。ボラティリティーは「価格の変動の大きさ」のことです(用語集)。日経VIは過去の値動きではなく、これから先の値動きを市場がどう予想しているかを表します。
計算のもとになるのは、大阪取引所に上場している日経225オプションの価格です。オプションの価格には「この先どれくらい動きそうか」という予想が織り込まれていて、それを逆算したものがIV(インプライド・ボラティリティ)です。日経VIは、このIVの考え方で日経平均全体の予想変動率を1つの数字にまとめたものです。
- 使う限月:期近の2つの限月のオプションからそれぞれ値を計算し、満期がちょうど1か月(30日)になるように補間します
- 算出の開始:2010年11月19日に公表が始まり、2012年1月30日からはリアルタイムで算出されています。1989年6月までさかのぼって計算した値もあります
- 動き方:先行きの荒れを予想する投資家が増えると上がり、もみ合いが続くと予想されると下がります
出所:日本経済新聞社「日経平均ボラティリティー・インデックス FAQ」「指数用語解説 ボラティリティー・インデックス」
02数字の読み方:日経VIから値幅を計算する
日経VIの数字は「年率で何%動くか」です。期間を短くしたいときは、次の手順で換算します。
- 1か月の値幅にしたいときは、日経VIを√12(約3.46)で割る
- 1日の値幅にしたいときは、1年の営業日を約250日として√250(約15.8)で割る
- 出てきた%を日経平均の水準に掛けると、円での値幅(1σ)になる
1σ(シグマ)は、値動きが正規分布に従うと仮定したとき、約7割の確率で収まる範囲です。日経平均を70,000円と仮定して計算すると、次のとおりです。
| 日経VI | 1か月の変動率(1σ) | 1日の変動率(1σ) | 1日の値幅の目安 (日経平均70,000円) |
|---|---|---|---|
| 15 | 約4.3% | 約0.95% | 約660円 |
| 20 | 約5.7% | 約1.26% | 約890円 |
| 30 | 約8.6% | 約1.89% | 約1,330円 |
| 35 | 約10.1% | 約2.21% | 約1,550円 |
| 40 | 約11.5% | 約2.53% | 約1,770円 |
| 50 | 約14.4% | 約3.16% | 約2,210円 |
カブラボ計算。実際の値動きは正規分布どおりではなく、1σを大きく超える日も起こります。
同じ「1,000円安」でも、日経VIが15の時期と40の時期では意味がまったく違います。前者なら予想を大きく超える動きで、後者なら1σの範囲内です。値幅を「何円」ではなく「日経VIに対して何倍か」で見ると、相場の荒れ具合を比べやすくなります。
03水準の目安と過去の主な局面
日本経済新聞社の解説では、日経VIは平時におおむね20〜30で推移し、市場関係者は30や40といった節目に注目することが多いとされています。過去の主な局面は次のとおりです。
| 時期 | 出来事 | 日経VIの水準 |
|---|---|---|
| 2008年秋 | 世界的な金融危機 | 92(さかのぼって算出した値) |
| 2011年3月15日 | 東日本大震災後、原発事故が深刻化 | 70近く |
| 2015年夏 | 中国・人民元の切り下げ後 | 47 |
| 2016年6月 | 英国のEU離脱方針決定の翌日 | 40超 |
| 2024年8月5日 | 植田ショック(日経平均が過去最大の4,451円安) | 日中に一時85.38、終値70.69(前週末比41.25ポイント高) |
出所:日本経済新聞社「日経平均ボラティリティー・インデックス FAQ」「指数用語解説 ボラティリティー・インデックス」。2024年8月5日の値は、ダイヤモンド・ザイ・オンライン(2024年8月)と SBI証券 投資情報メディア(2024年8月6日)による。終値70.69は、東日本大震災時を上回り、リーマン・ショック以来の高水準でした。
ただし「平時は20〜30」は長い期間をならした目安です。相場の土台が変わると、高い水準が長く続くこともあります。1つの数字で「高い・低い」を決めつけず、直近の推移と比べて見るのが実用的です。
04日経平均・オプションの売り買いとの関係
日経平均とは逆に動きやすい
日本経済新聞社によると、日経VIは過去、日経平均とおおむね逆の方向に動く傾向があります。急落の局面では、下落に備えてプットを買う人が増え、オプションの価格が上がるためです。このため「恐怖指数」と呼ばれることもあります。ただし日経VIそのものは値動きの大きさの予想で、下落の予想ではありません。
オプションの価格は日経VIと一緒に動く
オプションの価格は、相場の予想変動が大きいほど高くなります。日経VIが上がる局面では、同じ行使価格・同じ残り日数でも、プレミアムが高くなります(IVの変化に対する価格の感応度がベガです)。
| 日経VIが高いとき | 日経VIが低いとき | |
|---|---|---|
| オプションの価格 | 高くなりやすい | 安くなりやすい |
| 売り手 | 受け取るプレミアムは多いが、急変で大きく損をするリスクも高い。証拠金も増えやすい | 受け取れるプレミアムが少なく、リスクに見合わないことがある |
| 買い手 | 割高なプレミアムを払うことになり、VIが下がると値動きが当たっても価格が伸びにくい | 保険(プットの買い)を比較的安く用意できる |
オプションの基本的な仕組みは日経225オプションとはで、IV・HVの違いは用語集で解説しています。
05日経VIを見るときの注意点
日経VIはよく話題になる数字ですが、終値だけを見て判断すると読み違えることがあります。私が確認している順番は次のとおりです。
- 終値だけでなく日中の推移を見る:日経VIの終値は、引け間際のオプション価格の付き方に左右されやすい指標です。終値が急に跳ねても、日中はむしろ前日より低かった、ということがあります。
- 限月の切り替わりを意識する:日経VIは残り30日に合わせて2つの限月を混ぜて計算します。時期によっては次の限月の比重が大きくなり、その限月の価格の付き方が数字に強く出ます。
- 連休の前後は割り引いて見る:連休の前は、売買の少ないオプションの気配の中値がIVを押し上げ、日経VIが高めに出ることがあります。
- 建玉とプットのIVで裏を取る:本当に下落への備えが急いで買われているなら、プットの建玉やIVにも変化が出ます。そこに大きな変化がなければ、計算上の動きの可能性があります。
カブラボのマーケットデータでは、公式の日経VIを1分足で補正した「真の日経VI」をもとに、日経平均の値動きが日経VIの想定内かどうかを毎営業日判定しています。
06日経平均VI先物とは
日経VIそのものを売買できる商品が、大阪取引所の日経平均VI先物です。「この先、相場が荒れるか落ち着くか」に賭ける先物で、2012年2月27日に上場しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取引単位 | 日経平均VI × 10,000円 |
| 呼値(値段の刻み) | 0.05ポイント(1刻み=500円) |
| 限月 | 直近の連続する8か月 |
| 取引時間 | 日中 9:00〜15:45/夜間 17:00〜19:00 |
| 最終決済 | 反対売買、または最終清算数値による決済 |
出所:日本取引所グループ「日経平均VI先物取引 制度概要」(2026年10月時点)
取引時間は日経225先物・オプション(夜間は翌6:00まで)より短く、売買も日経225先物と比べると限られます。日経VIの「現在値」と、VI先物の価格(将来の日経VIの予想)は一致しないことにも注意が必要です。
07熊谷の見方:高ボラ時代の日経VIとの付き合い方
ここからは、私が記事で書いてきた日経VIの見方です。
「39.79で暴落の前兆」は読み違い
日経VIが引けで39.79まで急騰し、SNSで「暴落の前兆」という声が広がったことがありました。けれども日中の日経VIは前日より低く推移していて、急上昇は引け間際の動きによるものでした。直近30日ベースの計算で次の限月の比重が大きかったこと、連休前で中値がIVを押し上げていたことが重なっていました。建玉やプットのIVにも大きな変化はなく、大量のプット買いの形跡は見当たりませんでした。(日経VIが39.79で「暴落の前兆」? その読み方、たぶん間違ってます)
日経VIが35の時代に変えた5つのこと
日経VIが30〜40台で高止まりする相場では、それまでのやり方が通用しにくくなります。日経VIが35なら日率は約2.2%で、日経平均が7万円なら1σで約1,500円の値幅です。そこで私は次のように行動を変えました。(日経VIが35の時代に、私が投資行動を変えた5つのこと)
- 日経VIは変動の大きさを示す指標で、方向は示さないと割り切る。
- 高ボラの局面では、押し目買いやナンピンが逆効果になりやすいと考える。
- 銘柄選びより先にポジションのサイズを決め、ミニオプション中心に切り替える。
- 損切りの幅を広げるのではなく、枚数を減らす。
- ヘッジ(プロテクティブ・プットなど)を学ぶ方針に転換する。
08よくある質問
01日経VIとは何ですか?
日経VI(日経平均ボラティリティー・インデックス)は、日経225オプションと日経225先物の価格から計算される、日経平均が今後1か月にどれくらいの幅で動くと市場が予想しているかを表す指数です。日本経済新聞社が算出・公表していて、数字は年率の変動率(%)を表します。
02日経VIはどのくらいの水準なら高いのですか?
日本経済新聞社の解説では、平時はおおむね20〜30で推移し、30を上回る状態が続くと値下がりのリスクが意識されるとされています。市場では30や40が節目として注目されます。ただし高い水準が長く続く時期もあるため、直近の推移と比べて見るのが実用的です。
03日経VIが30だと、日経平均はどれくらい動くと予想されているのですか?
日経VIが30なら、1年後に日経平均が上下30%程度、1か月なら上下8.6%程度の範囲に約7割の確率で収まると予想されている、という意味です。1日に換算すると約1.9%で、日経平均が70,000円なら約1,330円にあたります。
04日経VIが上がると日経平均は下がるのですか?
日経VIは過去、日経平均とおおむね逆の方向に動く傾向がありますが、日経VIが示すのは値動きの大きさの予想だけで、方向は示しません。上昇局面で日経VIが上がることもあります。日経VIが上がったことだけを理由に下落を予想するのは誤りのもとです。
05日経VIの終値が急に上がったときは何を確認すればいいですか?
まず日中の推移を確認します。日経VIの終値は引け間際のオプション価格に左右されやすく、日中は前日より低かったということもあります。あわせて限月の切り替わりや連休前かどうか、プットの建玉やIVに変化があるかを見ると、本当に下落への備えが急いでいるのかを判断しやすくなります。
06日経VIは売買できますか?
大阪取引所に上場している日経平均VI先物で売買できます。取引単位は日経平均VI×10,000円、呼値は0.05ポイントで、直近の連続する8か月の限月があります(2026年10月時点)。取引時間は日中9:00〜15:45、夜間17:00〜19:00です。