01日経VIの公式終値は、引け間際に崩れることがある
日経VIは、日経225オプションの価格から計算される「日経平均が今後1か月にどれくらい動くと市場が予想しているか」を表す指数です。日本経済新聞社が算出し、日経平均プロフィルで日々の4本値が公表されています。
ところが、この公式の終値は、取引終了の間際に日中の水準から大きく下がって終わる日があります。日中はずっと30台で推移していたのに、終値だけが25前後になる、といった形です。この動きは、ほぼ大引け(15:40〜15:45のクロージング・セッション)での揺れによるもので、市場が予想する値動きの大きさが本当に変わったわけではありません。
カブラボで2023年1月から2026年10月までの935営業日を調べると、こうした崩れが目立つようになったのは2024年7月以降です。
| 年 | 営業日 | 終値を整え直した日 |
|---|---|---|
| 2023年 | 246日 | 0日 |
| 2024年 | 245日 | 40日 |
| 2025年 | 243日 | 11日 |
| 2026年(10月30日まで) | 201日 | 104日 |
出所:日経平均プロフィルの日経VI日次データ・1分足からカブラボ算出。整え直した155日のうち148日は、公式終値が引け前の水準より低い日でした(平均で約4.1ポイント低い)。
2026年は、営業日の約半分で公式終値が実態からずれています。日経VIの終値をそのまま使うと、2日に1日は間違った数字で相場を判断することになります。
02実例:2026年10月29日の「25.80」
直近の例を見てみます。
| 日付 | 公式終値 | 真の日経VI | 差 |
|---|---|---|---|
| 10月27日 | 27.66 | 34.77 | 7.11 |
| 10月28日 | 32.88 | 33.95 | 1.07 |
| 10月29日 | 25.80 | 32.97 | 7.17 |
| 10月30日 | 33.82 | 34.72 | 0.90 |
真の日経VIは、15:40より前の1分ごとの値から作った終値です。
公式終値だけを見ると、10月29日に日経VIは32.88から25.80へ急低下しています。「荒れ相場が一段落した」と受け取りたくなる数字です。ところが真の日経VIは33.95から32.97で、ほとんど下がっていませんでした。市場は相変わらず大きな値動きを予想していたのです。
翌30日、日経平均は2.12%下がり、公式終値も33.82に戻りました。25.80を信じてオプションを売っていた人は、想定よりはるかに大きな値動きに直面したことになります。
03真の日経VIの作り方
真の日経VIは、日経平均プロフィルの公表データをもとに、1日ごとに次の順で4本値を作り直しています。
- 1分ごとの値がある日:15:40より前の1分ごとの値で、高値・安値・終値を作り直します。大引けの値は使いません(始値は公式値のまま)。
- 1分ごとの値がない日:2024年7月以降で、終値が当日の値幅のいちばん下の方(下位10%以内)にあり、しかも始値と高値の平均より5%以上低い日だけ、終値を「始値と高値の平均」に置き換えます。
- それ以外の日:公式値をそのまま使います。
2024年6月以前はルールによる置き換えをしていません。本当に日経VIが急低下した日を、誤って補正しないためです。また、引け間際の動きは下がる方向だけではありません。2026年10月9日のように、公式終値(30.14)の方が引け前の水準(27.48)より高く出る日もあり、1分ごとの値がある日はどちらの向きも補正しています。
04公式終値と真の日経VIで、何が変わるか
日経VIの数字は、日経平均の値幅の目安に換算して使います。1日の値幅の目安(1σ)は、日経VIを√242(約15.6)で割った率です。10月29日の日経平均(64,659円)で比べると、次のようになります。
| 日経VI | 1日の変動率(1σ) | 1日の値幅の目安 | |
|---|---|---|---|
| 公式終値 | 25.80 | 約1.66% | 約1,070円 |
| 真の日経VI | 32.97 | 約2.12% | 約1,370円 |
カブラボ計算。1σは、値動きが正規分布に従うと仮定したとき約7割の確率で収まる範囲です。
同じ日なのに、想定する1日の値幅に約300円の差が出ます。オプションの売り手にとっては、どこまで離れた行使価格なら安全かの判断が変わり、先物なら損切りの幅や枚数の決め方が変わります。数字が低く出る方向にずれやすいので、公式終値を使うとリスクを小さく見積もりがちになる点が問題です。
変動レシオ:その日の値動きは想定内だったか
カブラボでは、日経平均のその日の値動きが日経VIの想定内だったかを、変動レシオ(日経平均の前日比の絶対値 ÷ 真の日経VIの日率)で見ています。1.00なら、日経VIが織り込んでいた1日分の値幅どおりの動きです。10月30日は日経平均が2.12%下がり、真の日経VIの日率は2.23%だったので、変動レシオは0.95でした。大きく下げた日でも、市場の想定の範囲内だったことが分かります。
05真の日経VIで相場を考える
結論から言うと、日経VIの公式終値は見てはいけません。公式終値の急な上下は、ほぼクロージング・セッションでの揺れで、相場の変化ではないからです。私は真の日経VIをその日の終値として判断しています。確認しているのは次の点です。
- 公式終値は判断材料に入れない。公式終値が急に下がっても「落ち着いた」とは考えず、真の日経VIの終値だけを見る。
- 真の日経VIの水準と向きで、オプションの行使価格の距離や先物の枚数を決める。数字が低く出た日の公式終値では決めない。
- 変動レシオが1を大きく超える日が続いたら、市場の想定を超える荒れ方をしていると見て、ポジションを小さくする。
- 日足の5日移動平均で真の日経VIの流れを見て、1日だけの上下に振り回されない。
日経VIはオプションの価格と直結する数字です。公式終値に惑わされず、真の日経VIを終値として相場の荒れ具合を考えることが、オプションでも先物でもリスク管理の出発点になります。
06真の日経VIを確認し、トレードに活かすには
真の日経VIは、カブラボが毎営業日の夕方に自動で計算しています。投資サロン「みんなの投資ラボ」のメンバーは、全員が次のものを使えます(YouTube「オプション投資ラボ」のメンバーシップのメンバーも利用できます)。
- 真の日経VIの日次データ:最新の終値(公式終値との比較つき)と変動レシオ、2023年からの全データ
- TradingView のインジケーター:真の日経VIを日足のローソク足で表示。5日移動平均と、補正した日の公式終値も一緒に表示できます
- マーケットデータ:真の日経VIをもとにした値動きの判定と、次回SQの想定レンジ
サロンでは、真の日経VIを見ながら、オプションの建て方や先物の枚数をどう決めているかも解説しています。
07よくある質問
01真の日経VIとは何ですか?
日経VIの公式終値が引け間際に崩れた日について、崩れる前の値で4本値(始値・高値・安値・終値)を整え直した、カブラボ独自の日経VIです。1分ごとの値がある日は15:40より前の値で作り直し、ない日は終値が大きく崩れた日だけ、終値を始値と高値の平均に置き換えています。
02日経VIの公式終値は、なぜ崩れるのですか?
公式終値の崩れは、ほぼ大引け(クロージング・セッション)での揺れによるもので、市場が予想する値動きの大きさが変わったわけではありません。そのため公式終値は判断材料に入れず、真の日経VIを終値として扱うべきです。カブラボの集計では2024年7月以降に目立つようになり、2026年は10月までの営業日の約半分で、公式終値が引け前の水準からずれていました。多くは公式終値の方が低く出ています。
03公式終値と真の日経VIは、どれくらい違うのですか?
整え直した日の平均で約4.1ポイント、大きい日は7ポイント以上違います。たとえば2026年10月29日は、公式終値25.80に対して真の日経VIは32.97でした。1日の値幅の目安に換算すると、日経平均で約300円の差になります。
04真の日経VIはどこで見られますか?
投資サロン「みんなの投資ラボ」のメンバー全員と、YouTube「オプション投資ラボ」のメンバーシップのメンバー向けに、毎営業日の夕方に更新しています。最新の終値と変動レシオ、2023年からのデータ、TradingViewで真の日経VIをローソク足で表示するインジケーターを使えます。
05変動レシオとは何ですか?
日経平均のその日の値動き(前日比の絶対値)を、真の日経VIの日率(真の日経VI÷√242)で割った値です。1.00なら日経VIが織り込んでいた1日分の値幅どおり、1を超えれば想定より大きく動いたことを表します。