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ナンピン癖のある人ほど、実は救われるという話

熊谷 順司(熊谷@オプション投資家)
公開日
#かぶオプ#リスク管理
// この記事の要点
  • ナンピンの本当の問題は買い下がる範囲・資金・撤退条件を始める前に決めていないこと
  • かぶオプのプット売りは行使価格を決めないと注文できず期限も当月限で自動的に決まる
  • 約定しなくてもプレミアムを受け取れて1ヶ月の時間が無駄なナンピンを抑える

ナンピンがいけない本当の理由は、損をすることそのものではありません。始める前に何も決めていないことです。この記事では、その「決められない」を意思ではなく仕組みで止める方法を、かぶオプ(個別株オプション)を例に解説します。

聞き慣れない言葉も出てきますが、ひとつずつ噛み砕いていきます。

まず、ナンピンはダメだとよく言われます。

ナンピンとは、買った株が下がったときに買い増して、平均の取得単価を下げることです。漢字では「難を平らにする」と書きます。

よく言われるというより、実際ダメです。私もダメだと思っています。

では、なぜダメなのか。

損をするから、というのは正しいのですが結果論なんですよね。ナンピンの本当の問題は、始める前に何も決めていないことにあります。

ここまでは多くの本やウェブサイトにも書いてあります。問題はその先です。たいてい「最初から計画的に決めましょう」で終わってしまう。それで決められるなら、誰も苦労していません。

なので今回は、どうすれば決められるのかまで書きます。結論のひとつは、やはりオプションです。

先にお断りしておくと、これはオプションをまだやっていない方に向けた話です。結論ありきでかなり簡略化している部分があるので、そこはご容赦ください。

そのうえで言えるのは、私自身がこれでナンピンをしなくなったということです。これは本当に大きかったです。

⚾ 投資は、失点を減らすほうが効きます

ナンピンをやめたからといって、一気に儲かるわけではありません。ただ、守りの力ははっきり上がります。余計な損をしないのだから当然ですね。

本当に勝っている人は、攻めだけでバンバン点を取っているわけではないんですよね。毎試合10対8や15対10で勝つような乱打戦は、観客としては楽しい。でもやっている側はたまったものではありません。監督も胃が痛いはずです。

失点が多いということは、点が取れなかった試合で大きく負けるということでもあります。投資を長く続けるなら、その形はもちません。

だからナンピンはやらない。分かっているのにやってしまう、をなくす。それを精神論ではなく仕組みで直すのが今回のテーマです。

🧭 ナンピンの本当の問題は「決めていない」こと

損が膨らむのはあくまで結果で、原因は入り口に判断がないことです。

下がってきた。そろそろ底だろう。このあたりで買っておくか。そうやって値頃感で入る。値頃感とは「なんとなく安く見える」という感覚のことですね。

それ自体は悪くないと思います。問題は、その先を決めていないことです。

  • どこまで買い下がるのか
  • その銘柄に使う資金は、いくらまでにするのか
  • どうなったら諦めるのか

ここが決まっていないから、想定より下げたときに「取得単価が下がるから」という言い訳で買い増してしまう。その結果、被害を広げるだけになります。

逆に言えば、決めてある買い下がりはナンピンではありません。

たとえば、こういう決め方です。

決めておくこと例
その銘柄に使う資金100万円
分け方30万・30万・40万の3分割
1回あたりの株数株価3,000円なら100株ずつ3回
注文の出し方あらかじめ指値を入れておく
諦める条件3回買った後の平均取得単価から、さらに10%下がったら全部ロスカット

指値とは「この値段になったら買う」という予約注文のことです。1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ。3回買えば平均の取得単価も計算できるので、撤退ラインも先に決められます。

これは買い下がりですが、ナンピンではありません。正式な定義は知りませんが、私はこれをナンピンとは呼んでいません。

自分が安いと思っても、市場がそう思わなければ売られます。だから「自分の評価と市場の評価の差をどこまで認めるか」は、自分のルールとして決めるしかないんですよね。なんとなく値頃感で入って、なんとなく何回か買い下がってしまった。これがナンピンです。

🍰 でも「決めればいい」では解決しません

それなら決めればいい、という話になります。そのとおりです。そして、それができれば苦労しません。

ダイエットと同じ構造なんですよね。突き詰めれば、食べなければ痩せます。そんなことは分かっている。でも人と食事に行けば、おいしいものもデザートも欲しくなる。

ルールを決めたつもりでも、下がった場面では「もう100株だけ」と手が出ます。取得単価が下がるから、という言い訳つきで。

10%下がったら損切りすると決めていても、いざ10%下がると切れません。

含み損と確定損は、実は同じものです。含み損というのは、まだ売っていないけれど値下がりしている状態ですね。金額は同じなのに、決済した瞬間に損が確定する、という心理が勝ってしまう。

戻ったときに取りっぱぐれるのが嫌だ。そう思って持ち続ければ塩漬けです。上がっていくなら買い直せばいいだけなのに、そうは動けないんですよね。

決算を待とうか。あのニュースまで待とうか。そうやって持ち続けて、あのとき切っておけばよかったと後から気づく。

私も若い頃は個別株を自分の判断で売買していて、2週間ほどの短期売買を10年くらい続けていました。だからこの守れなさは、嫌というほど分かります。

🔒 だから仕組みで止めます

その答えのひとつがこれです。オプションは、決めないと注文が出せません。

日本株でやるなら、かぶオプ(個別株オプション)になります。

ここで使うのは「プットの売り」という取引です。ざっくり言うと、決めた価格まで下がったら株を買う、という約束を引き受ける取引です。その代わりに、いまプレミアム(手数料のような代金)を受け取れます。

現物株でも「どこで買うか」は決めるべきです。ただ現物は、成行でポンと注文を出せてしまいます。オプションはそうはいきません。注文までに、次の順番で決めることになります。

  1. 銘柄を決める(これだけでは注文になりません)
  2. 行使価格、つまり「いくらで買う約束をするか」を決める
  3. その価格で受け取るプレミアムと天秤にかけ、引き受けていいかを判断する

2番目は言い換えると「どこまで下がったら100株買ってもいいのか」を決めることです。覚悟を決める作業でもあります。

指値と同じだと思うかもしれません。ただプットを売るときは、受け取るプレミアムと天秤にかけます。この価格でこの金額なら引き受けていいか。一度踏みとどまる構造になっているんです。

ナンピン癖のある人は、前日比2%下がると「明日は上がりそうだ」で飛び乗ってしまいます。今日のうちに買っておかないと、と思うわけです。その飛び乗りが、構造的にやりにくくなります。

⏳ そして「いつまで」が決まります

もうひとつ大きいのが、期限が決まることです。

かぶオプは取引量の都合で、動いているのがほぼ当月限だけです。限月とは、その約束の期限が来る月のことですね。

収録時点の9月12日(土)なら、当月限は10月限です。10月第2木曜日がゴールと自動的に決まります。

日本のかぶオプは、期中に株を持たされることがありません。判定は第2木曜日の終わりです。つまりいま持っているのは株ではなく、買う約束だけなんですよね。

だから期中に少し下がっても慌てなくていい。もちろん満期まで下がりっぱなしなら高いところで買わされるので、安心して放置していいわけではありません。ただ、時間の余裕があります。

結果が出るまで1ヶ月かかるので、その間に頭が冷えます。一旦下がっても満期の時点では戻っていて、ことなきを得ることも結構あります。

もちろん、プットを1枚売って、下がったからもう1枚売る。これをやればナンピンと同じです。オプションにすれば必ず防げる、という話ではありません。ただ実感として、現物ほどポンポンとはいきません。株を持っていないぶん、追加で売ろうとは意外とならないんです。

この「いつまで」を意識する癖も、実は投資にすごく効きます。

個別株しかやっていなかった頃の私には、その感覚がありませんでした。制度信用なら6ヶ月が期限ですが、6ヶ月先のシナリオを立ててポジションを取っていたかというと嘘になります。とりあえず猶予がある、くらいの感覚でした。

😌 そもそもプレミアムをもらえます

最後に、かぶオプそのものの話も少しだけしておきます。

株価1万円の銘柄を、9,000円になったら買いたいとします。

単純に9,000円で指値を置くのか。それとも9,000円のプットを売って、プレミアムを3%受け取るのか。

後者なら、約定しなくても3%はもらい得です。同じ「9,000円で買いたい」でも、入り口がまるで違いますよね。

プレミアムをもらっている分だけ守りが強くなり、さらに1ヶ月の余裕が無駄なナンピンを抑える。長い目で見れば、損をするタイミングが減ります。

きちんとスケジュールを立てて買い下がれる方なら、かぶオプの価値はプレミアム分くらいかもしれません。それは素晴らしいことです。

ただ多くの人、特に投資を始めたばかりの方はナンピンをしてしまいます。Xで誰かの買い増し報告を見て、中途半端に勇気をもらって自分もやってしまう。そういう人と、仕組みでナンピンを止めた人とでは、長くやるほど差がつきます。

私は若い頃、散々ナンピンをして損を積み上げました。プラスになっても結局チャラになる。それを10年ほど続けました。頑張った割に利益が増えなかったのは、余計なところで失点していたからです。

いまは、かぶオプという商品があります。JPXも去年から3度目の正直として普及に動いています。専門知識は要りません。口座さえあれば、プットを売るだけです。

ナンピンを止めるのに、強い意思は必ずしも要りません。決めないと注文できない仕組みと、期限が来るまでの時間があれば、守れなかったルールも守りやすくなります。

決めたのに守れなかった、という経験があれば、どの場面でいちばん崩れたのかX(@J_kumagai)で教えてもらえると嬉しいです。

この記事の内容は、Substack でポッドキャストとしても配信しています。

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