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25万円を取りに行って、200万円を失った話

熊谷 順司(熊谷@オプション投資家)
公開日
#日経225オプション#リスク管理#日経平均
// この記事の要点
  • 2020年2〜3月のプット売りで3月限だけで約150万円、4月限と合わせて約200万円を失った
  • 含み損を取り返そうと3枚目と4枚目のプットを売り増し、逆指値も入れていなかった
  • 4枚をSQまで持ち続けていたら1
  • 553万円のマイナスだった

2020年のコロナショックで、私は日経225オプションの売りから約200万円を失いました。この記事では、その売りのポジションがどう崩れていったのかを日付と数字で追いかけます。あわせて「オプションの売りは損失に上限がない」とは具体的にどういうことなのかも説明します。

聞き慣れない言葉も出てきますが、ひとつずつ噛み砕いていきます。

最初に前提を押さえておきます。オプションには買いと売りがあります。買いは、払ったお金以上には損をしません。売りは、最初にプレミアム(代金)を受け取る代わりに、相手の損を引き受ける側に回ります。ここで扱うのは、その売りの失敗談です。

私はよく「コロナで車1台分飛ばした」と言っています。厳密には、2月から3月のオプションだけで約200万円です。現物なども含めるとコロナ全体で300万円近くになります。当時そんな何千万円も持っていたわけではないので、下手をすれば退場でした。

今回はその恥を全部さらします。細かい取引履歴までは追えていないので、プレミアムは記憶ベースです。オプション専用ツール「Prize」のバックテストの数字も使いますが、終値ベースなので実際の約定とは少し違います。

💣 2月14日、40円のコールとプットを売った

始まりは2020年2月14日の金曜日に組んだショートストラングルです。上のコールと下のプットを同時に売る形のことです。株価が真ん中あたりで終われば両方とも紙くずになり、受け取ったプレミアムがそのまま利益になります。当時も今も、私がよくやる形です。

売っていたのは40円前後のコールとプット。1枚あたり4万円を受け取る計算ですね。実は今やっている水準ともあまり変わりません。

違ったのは中身です。IVもグリークスも、ほとんど理解していませんでした。

IVは、市場が見込んでいる値動きの荒さです。グリークスはデルタ・ベガ・ガンマといった、オプションの値動きのクセを測る指標です。それを知らないまま、儲かっているからオプションはすごいぞと思っていました。自分がどれだけのリスクを張っているのかを分かっていなかったんです。

日経平均は23,000円台。証拠金も軽い時代でした。証拠金とは、売りのポジションを持つために預ける担保のことです。今はVaR方式という計算に変わっていますが、当時はSPAN方式で比較的抑えられていました。私がショートストラングルを2セット3セット持てたのは、単に証拠金が少なくて済んだからです。2月17日には調子に乗って、似た水準でもう1セット売っています。

そこからじりじり下げていきます。ただ、当時の下げ幅は100円200円です。

感覚をそろえておくと、23,200円の1%は232円。今の水準の2%は1,200円ほどですから、当時の300円400円は今とはまったく意味が違います。

毎日1%から1.5%ずつ下げて、武漢のほうからはやばそうな話が聞こえてくる。それでも株価はまだパニックになっていない。こういうのは、ある時にドカンとくるものです。東日本大震災のときもそうでした。

株価が下がるのでコールは減価します。プットは45円で売ったものが48円程度。2月14日から21日までの1週間は、痛くも痒くもありませんでした。

🔥 取り返そうとして、3枚目と4枚目を売った

流れが変わったのは2月21日です。プットが68円から70円になりました。2枚で5万円ほどの含み損、コールの利益を引いて4万円ほどのマイナスです。

ここで私は、根拠のない自信で3枚目のプットを売ります。この辺で止まるだろう、反発するだろう。40円の含み損なら、40円のプットをもう1枚売れば取り返せる。そういう発想でした。

そこから急落が始まります。翌日が620円安で、2.5%ほどの下落。45円が215円になり、2月26日には44円が330円を超えました。40円台で売った2枚が300円で60万円のマイナス。もう1枚が220円で20万円。コール側の利益8万円弱を引いて、50万円ほどの含み損です。

そしてここで、さらに判断を誤ります。

コールはほぼ利益になっている。最終的には助かって、最悪でも20万円のマイナスで済むんじゃないか。だったら3月限のうちに、あと4、5万円取り返したい。

そう考えて、4枚目のプットを売りました。

本来は、40円で売ったものは80円でロスカットするつもりでした。ただ順調に勝ってきたこともあって、逆指値を入れていなかった。取り返せると思って売り増している人間は、入れようとも思わないんです。

ちなみに4枚目のプットは、IVが45を超えていました。下がっている最中に、利益を取るためにプットを売る。今なら絶対にやりません。

🏳️ 2月27日、120万円でギブアップした

翌日も相場は500円ほど下げました。2%超の下落です。

会社に着いてスマホを見ていたのを、よく覚えています。戻る気配がないどころか、さらに下げていく。45円で売ったものが500円を超え、もう1枚が370円。ここだけで120万円の含み損です。

100万円のロスカットなんてしたことがありません。毎月5万円10万円増えて喜んでいたレベルです。それが一発で120万円。

まだ強制決済される金額ではありませんでした。ただ、明日もう一度同じ下げがきたら追証で足りない。追証とは、担保が足りなくなったときに追加で入金を求められることです。300万円500万円になったらどうしよう。そう考えた瞬間に体が動いて、成行で板にぶつけました。100万円で固まって動けなくなることも十分あり得たと思います。追証の額をちゃんと想像できたから逃げられました。

ただし投げたのは3枚で、4枚目はまだ持っていました。85円ほどで、4万5千円のマイナス。300円500円を切った直後なので、80円なら耐えられる気がしたんです。完全に麻痺しています。

その後、急落が落ち着いて100円ほどまで戻りました。SQまで残り3、4日です。

ここは初心者の方に一番気をつけてほしいところです。 残日数が少ないから耐えられそう、と思ってしまう。でも残日数が少ないからこそ、株価が少ししか動かなくてもプレミアムは大きく動きます。ガンマ、つまりプレミアムの動きの加速度が暴れるからです。

案の定、3月9日に1,300円安。2万円あたりから1日6%の下落で、セリングクライマックスです。100円まで戻っていたものが終値で480円。朝方に300円台から400円前半で投げました。40万円の含み損です。

結局、4枚のプット売りで160万から165万円のロスカット。コール側の回収は8万円ほどで焼け石に水でした。3月限だけで150万円の損失です。そのあと4月限でも懲りずに取り返そうとして、さらに40万円乗せています。合わせて約200万円です。

ここまでの流れを表にまとめておきます。

時期起きたこと損益の状況
2月14日40円前後のコールとプットを売る(1セット目)1枚あたり4万円を受け取る
2月17日似た水準でもう1セット売る21日まではほぼ無傷
2月21日プットが68〜70円に。3枚目のプットを売る約4万円のマイナス
2月26日ごろ44円のプットが330円超。そのあと4枚目のプットを売る約50万円の含み損
2月27日さらに500円ほど下落。3枚を成行で決済約120万円の損失
3月9日1,300円安。4枚目を300円台〜400円前半で決済約40万円の損失
3月限合計プット4枚で160万〜165万円、コール側の回収は約8万円約150万円の損失
4月限取り返そうとしてさらに損失約40万円、合計で約200万円

🧮 持ち続けていたら、1,553万円だった

本当に伝えたいのはここからです。

2020年3月13日のSQ値は17,052円でした。SQはオプションの清算日、SQ値はそのときの清算価格です。23,500円あたりから6,700円ほどの下落で、3月限の期間だけで約30%下げたことになります。

仮にプット売り4枚を持ち続けていたら、どうなっていたか。

1,553万円のマイナスです。

もちろん途中で証拠金が足りなくなって強制決済されます。ただその場合でも500万円から600万円のマイナスで、400万円から500万円の追証を求められていた計算です。ギリギリ払えたと思いますが、そういう話ではありません。

⚖️ 損失に上限がない、という意味

オプションが怖いもので、売りがさらに怖いのは事実です。

ただ、オプションをやらない人ほど「売りなんてバカがやることだ」と言いがちです。私はそう思っていません。機関投資家は普通に売りも組み入れています。買いしかしないわけがない。リスクがあるからリターンがあるからです。

売りをやるべきだとは言いません。ただ、リターンの裏にリスクがあるのは当たり前です。そのリスクを認識して入るかどうかの話です。

そしてオプションは、このリスクの認識が本当に難しい。

現物株なら、200万円分買って紙くずになっても損は200万円で、上限が決まっています。オプションの売りは違います。もらえる金額に上限はありますが、損する金額に上限がない。 1,553万円という数字も、たまたまその動きだっただけです。

しかもデルタ0.1のものが、最悪1.0まで行きます。デルタは、株価が動いたときにプレミアムがどれだけ動くかの倍率です。1枚分の価値が10枚分になるということです。損失は直線ではなく、二次曲線で膨らんでいきます。

ブラックショールズを使えば、株価がこれだけ動いたらプレミアムはこのあたり、という計算はできます。でもそれはボラティリティを一定と置いた計算です。明日のボラティリティは明日にならないと分かりません。先物なら100円動けば損益も100円分。オプションはそうなりません。

✅ 正しく怖がれば、武器になります

ここまでを理解したうえでなら、オプションの売りは非常に有効だと思っています。私が考える守り方は次の3つです。

  1. 確度の高いところで売りを入れる
  2. ロスカットを決めておく
  3. 刺さらないときに備えて、先物のヘッジ注文も置いておく

この守り方をマスターしていれば、売りは勝率が高く、時間を味方にできます。ボラティリティの高いところをうまく売れれば、利益率も高い戦術です。

だから「オプションの売りはダメだ」と知ったかぶりで切り捨てるのは、もったいない。ただし「なんとなく儲かる、これはおいしいぞ」でやっていると、私と同じ地獄を見ます。急落だけではありません。明日アメリカとイランの問題が解決した、というヘッドラインで2,000円3,000円の急騰が起きることも普通にあり得ます。

プロがオプションで稼いでいる同じ戦場で、個人が現物株だけをガチャガチャやっても、なかなかうまくはいきません。

私は金融機関出身ではありません。絵に描いたような失敗をして、運よく生き残りました。そこから自分なりに勉強して、戦術を組み立ててきました。オプションは、選ばれた人間やプロにしか分からない世界ではないと思っています。

それでも失敗はしますし、一発退場もあり得ます。だからこそ、最初から欲張らないこと。まず勉強すること。焦らないこと。25万円を取りに行って200万円を失った人間の言葉として、受け取ってもらえたらと思います。

最後にひとつだけ質問させてください。いま持っているポジションの最大損失を、すぐに言えるでしょうか。考えたことがなかったという方は、X(@J_kumagai)で教えてもらえると嬉しいです。次に書くときの参考にします。

この記事の内容は、Substack でポッドキャストとしても配信しています。

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// MIN-LABO

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投資サロン「みんなの投資ラボ」では、戦術の考え方から、使うチャートの作り方、建て方・決済のルールまでを順を追って解説しています。熊谷の実ポジションやバックテストは、数日後に記録として共有しています。

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