教科書どおりのテクニカル分析を10年単位でバックテストしたら、ほぼ勝てませんでした。この記事では、私がAIで行った検証の結果と、なぜ長く検証すると勝てなくなるのか、そして今チャートをどう使えばいいのかをまとめています。
私が投資に目覚めたのは20代半ばです。それから30年近く、チャートを見続けてきました。
2020年5月にオプション投資ラボ(オプラボ)を始めて、もうすぐ6年になります。毎日チャートをベースに発信しています。
TradingViewというチャートツールのアンバサダーもやらせてもらっています。最近は自分でPineスクリプトを書いて、オリジナルチャートまで作るようになりました。
チャートを信じて、ゴリゴリやってきた側の人間なんですよね。
その私が、最近テクニカル分析を疑い始めています。
ただし、ここで言うテクニカル分析は私のチャート分析とはあえて切り離しています。昔からある教科書的な、チャートの基礎としてのテクニカル分析のことです。
📉 教科書どおりに使うと、10年では勝てなかった
AIのおかげで膨大なデータを検証できるようになったので、実際に試してみました。
使ったデータは1分足を3年半分、日足を12年分です。
対象はRCI、RSI、MACD、一目均衡表といった有名なチャート。「線が交差したら買う」「80を超えたら買われすぎ」といった一般的なルールで、バックテスト(過去データでの検証)をしました。
結果は、どのチャートも10年スパンではほぼ勝てませんでした。
ルールの絞り方ごとに結果をまとめると、こうなります。
| ルールの条件 | サインの頻度 | 結果 |
|---|---|---|
| かなり絞る | 10年で10回(年1回) | プラスになるものは出るが、入り逃したら終わりで使い物にならない |
| 緩める | 月に1〜3回 | ほぼチャラ |
| 緩めたうえでコストを含める | 月に1〜3回 | 手数料・金利・少し不利な約定まで入れると、頑張ってもプラスにならない |
チャート大好き人間の私からすると、死刑宣告みたいな結果でした。
🌦️ どのチャートにも、得意な地合いと苦手な地合いがある
理由はシンプルで、相場の雰囲気、つまり地合いが数年ごとに変わるからです。
2017年からコロナ前までは、いわゆるゴルディロックス(熱すぎず冷たすぎない適温相場)でした。
日経平均は2万円台前半をうろうろしていて、2万4千円に近づくと売られる。あまり動かないので、オプションで上と下の両方を売っていれば儲かるような、ぬるま湯相場です。
そこへコロナの暴落が来て、2023年以降は暴騰が来ます。
もみ合い相場に強いチャートは、ゴルディロックスの期間は成績が抜群です。でも暴落にも暴騰にもついていけず、どちらでも大きなマイナスになる。これを10年、15年まとめて検証すれば、プラスとマイナスが打ち消し合ってしまいます。
研究でも同じ話が出ています。
1999年のサリバンらの研究は、100年分のNYダウで単純なルールを調べたものです。1986年まで効いていたルールは、その後の10年では最も成績の良いものでさえ効いていませんでした。2016年のマクリーンとポンティフの研究では、論文で発表された株価の法則は、発表後に効き目が平均で約6割落ちています。
みんなが知って真似をした戦術は効かなくなります。相場はお金の取り合いなので、相手の裏をかかないと儲からないからです。
古いテクニカルは、引退した名選手のようなものだと思っています。
🤖 「データは多いほど正しい」はAIのミス
昔の私も、「データは長く細かく集めるほど正しい」と考えていました。
でも10年、20年のデータは、野球選手でいえば通算打率です。通算の成績がすごくても、今どうかは別の問題ですよね。
私がやりたかったのは確率や統計の勉強ではありません。今の相場でどう勝つかです。
AIは何度でも検証してくれます。そして「データが少ないから、もっと長い期間を見ないと判断できない」と言ってきます。数学としては正しいんです。でも数年ごとに夏と冬が入れ替わる相場では、データを足すほど打ち消し合いが進みます。
AIに分析させるほど、勝てる方法がないという絶望にたどり着く。これを私はあえてAIのミスと呼んでいます。
そしてその結果を見て「チャートは使えない」と決めてしまうのが、人間のミスです。私もそうなりかけました。
2〜3年のバックテストで話をすると、ほぼ毎回「データが少なすぎて意味がない」と言ってくる人がいます。では、どの程度データがあれば意味があるのか。おそらく明確な答えは持っていないと思います。
自分で調べていないからです。
数学や統計学をやりたいのか、投資・トレードで勝ちたいのか。目的がずれてしまっているんです。
余談ですが、テクニカルアナリストの資格にも、今の相場で勝つための価値はほとんどないと思っています。昔ながらの考え方を理解している、という資格だからです。
昔ワークした手法を、今の状況で何も検証せずに当てはめているだけ。「今ワークする手法やチャートを生み出す努力をしていない」と感じています。
あくまで私の意見ですけど。
🔍 私が4年前から、知らずにやっていたこと
その一方で、勝てるチャートはあります。私が公開しているチャートは全部自分で実践していて、オプションで検証してもプラスを維持しています。
この差は何でしょうか。
AIがなかった頃の私はプログラムも書けなかったので、Excelに手作業で検証結果を打ち込んでいました。年70回売買する戦術だと、1年分で3〜4時間かかります。だからバックテストは3年分が精一杯でした。
振り返ると、こういう流れで戦術を選んでいたことになります。
- 直近3〜5年の検証で、使えるものと使えないものを判断する
- 残った候補をオプションに当てはめる
- 成績のいいものに「〇〇大作戦」と名前をつけて紹介する
AIで検証し直した結果、ある意味これが正しかったと分かりました。
データが少なすぎる、来年も通用する保証はない。それはもっともです。でも今ワークしている(うまく機能している)ものを、今使う。これがチャートの正しい使い方です。
夏には夏服、冬には冬のコートを着る。それと同じなんですよね。
⚾ 「現役チャート分析」という考え方
そこで私は、テクニカル分析へのアンチテーゼとして「現役チャート分析」を提唱したいと思っています。私が勝手に作った言葉です。
いま一軍として使っているのは16〜20枚ほどです。メンバーには毎日、戦術シートとしてPDFで共有しています。
- MACD Mk2
- Zスコア(平均からどれだけ離れたか)… ここ1年のエース級
- バンドウォーク … 地合いが変わってもほぼ通用する最強のチャート
- RCIとGMMA … NT倍率(日経平均÷TOPIX)では6年以上ワーク
2020年以降だけでも、地合いは何度も変わってきました。
コロナの暴落。景気はボロボロなのに株価が上がる、不景気の株高。2022年のアメリカの利上げによる下落。2023年4月のバフェット来日からの上昇。そしてAIブームによる半導体株の急騰です。
2024年8月の植田ショックでは、日経VIが日中88ほどまで上がり、史上最高値をつけました。証拠金は過去の変動をもとに計算される方式なので、この記録が傷として残ります。証拠金は高止まりし、日経VIは30超えが1年以上続いています。
日経VIが18〜20だった時代のチャートを持ってきても、そうそうワークしないだろうというのは簡単に予測できますよね。
もし今年の秋相場で6月22日の73,800円あたりの高値を抜けなければ、横ばいか下落に入っているのかもしれません。
そうなると、上昇トレンドでワークしていたタイプは成績が落ちてくるかもしれません。一軍チャートが効かなくなるのはじわじわです。なので、この「現役チャート」がまだ現役なのか役目を終えたのかは、半年、1年スパンで判断していくことになります。
勝率が落ちてきたと感じたら、一軍と二軍を入れ替える。
✅ おわりに
チャートにはファンダメンタルズも需給も反映されます。何を拠り所にするかでいえば、チャートが一番優れているという私の考えは変わっていません。
意味がないのは、古いテクニカル分析を必死に勉強することと、古いチャートを長く検証することのほうです。
やるべきことは、今ワークしているチャートを見極めること。もしくは自分で作ること。そしてワークしている間にしっかり稼ぎ、ダメになったら乗り換えることです。
考え方は順張りと同じで、3年、5年という波を見つけて乗っていくイメージです。
あなたが使っているチャートは、今の地合いでも一軍でしょうか。長く使ううちに効かなくなったチャートがあれば、X(@J_kumagai)で教えてもらえると嬉しいです。