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30年チャートを見てきた私が、テクニカルを疑い始めた話

熊谷 順司(熊谷@オプション投資家)
公開日
#テクニカル#相場観#日経225オプション#日経VI
// この記事の要点
  • RCI・RSI・MACD・一目均衡表を一般的なルールで検証すると10年スパンではほぼ勝てなかった
  • 地合いは数年ごとに変わるため長期の検証ほど得意な期間と苦手な期間の成績が打ち消し合う
  • 今ワークしているチャートを一軍で使い勝率が落ちたら二軍と入れ替えるのが現役チャート分析

教科書どおりのテクニカル分析を10年単位でバックテストしたら、ほぼ勝てませんでした。この記事では、私がAIで行った検証の結果と、なぜ長く検証すると勝てなくなるのか、そして今チャートをどう使えばいいのかをまとめています。

私が投資に目覚めたのは20代半ばです。それから30年近く、チャートを見続けてきました。

2020年5月にオプション投資ラボ(オプラボ)を始めて、もうすぐ6年になります。毎日チャートをベースに発信しています。

TradingViewというチャートツールのアンバサダーもやらせてもらっています。最近は自分でPineスクリプトを書いて、オリジナルチャートまで作るようになりました。

チャートを信じて、ゴリゴリやってきた側の人間なんですよね。

その私が、最近テクニカル分析を疑い始めています。

ただし、ここで言うテクニカル分析は私のチャート分析とはあえて切り離しています。昔からある教科書的な、チャートの基礎としてのテクニカル分析のことです。

📉 教科書どおりに使うと、10年では勝てなかった

AIのおかげで膨大なデータを検証できるようになったので、実際に試してみました。

使ったデータは1分足を3年半分、日足を12年分です。

対象はRCI、RSI、MACD、一目均衡表といった有名なチャート。「線が交差したら買う」「80を超えたら買われすぎ」といった一般的なルールで、バックテスト(過去データでの検証)をしました。

結果は、どのチャートも10年スパンではほぼ勝てませんでした。

ルールの絞り方ごとに結果をまとめると、こうなります。

ルールの条件サインの頻度結果
かなり絞る10年で10回(年1回)プラスになるものは出るが、入り逃したら終わりで使い物にならない
緩める月に1〜3回ほぼチャラ
緩めたうえでコストを含める月に1〜3回手数料・金利・少し不利な約定まで入れると、頑張ってもプラスにならない

チャート大好き人間の私からすると、死刑宣告みたいな結果でした。

🌦️ どのチャートにも、得意な地合いと苦手な地合いがある

理由はシンプルで、相場の雰囲気、つまり地合いが数年ごとに変わるからです。

2017年からコロナ前までは、いわゆるゴルディロックス(熱すぎず冷たすぎない適温相場)でした。

日経平均は2万円台前半をうろうろしていて、2万4千円に近づくと売られる。あまり動かないので、オプションで上と下の両方を売っていれば儲かるような、ぬるま湯相場です。

そこへコロナの暴落が来て、2023年以降は暴騰が来ます。

もみ合い相場に強いチャートは、ゴルディロックスの期間は成績が抜群です。でも暴落にも暴騰にもついていけず、どちらでも大きなマイナスになる。これを10年、15年まとめて検証すれば、プラスとマイナスが打ち消し合ってしまいます。

研究でも同じ話が出ています。

1999年のサリバンらの研究は、100年分のNYダウで単純なルールを調べたものです。1986年まで効いていたルールは、その後の10年では最も成績の良いものでさえ効いていませんでした。2016年のマクリーンとポンティフの研究では、論文で発表された株価の法則は、発表後に効き目が平均で約6割落ちています。

みんなが知って真似をした戦術は効かなくなります。相場はお金の取り合いなので、相手の裏をかかないと儲からないからです。

古いテクニカルは、引退した名選手のようなものだと思っています。

🤖 「データは多いほど正しい」はAIのミス

昔の私も、「データは長く細かく集めるほど正しい」と考えていました。

でも10年、20年のデータは、野球選手でいえば通算打率です。通算の成績がすごくても、今どうかは別の問題ですよね。

私がやりたかったのは確率や統計の勉強ではありません。今の相場でどう勝つかです。

AIは何度でも検証してくれます。そして「データが少ないから、もっと長い期間を見ないと判断できない」と言ってきます。数学としては正しいんです。でも数年ごとに夏と冬が入れ替わる相場では、データを足すほど打ち消し合いが進みます。

AIに分析させるほど、勝てる方法がないという絶望にたどり着く。これを私はあえてAIのミスと呼んでいます。

そしてその結果を見て「チャートは使えない」と決めてしまうのが、人間のミスです。私もそうなりかけました。

2〜3年のバックテストで話をすると、ほぼ毎回「データが少なすぎて意味がない」と言ってくる人がいます。では、どの程度データがあれば意味があるのか。おそらく明確な答えは持っていないと思います。

自分で調べていないからです。

数学や統計学をやりたいのか、投資・トレードで勝ちたいのか。目的がずれてしまっているんです。

余談ですが、テクニカルアナリストの資格にも、今の相場で勝つための価値はほとんどないと思っています。昔ながらの考え方を理解している、という資格だからです。

昔ワークした手法を、今の状況で何も検証せずに当てはめているだけ。「今ワークする手法やチャートを生み出す努力をしていない」と感じています。

あくまで私の意見ですけど。

🔍 私が4年前から、知らずにやっていたこと

その一方で、勝てるチャートはあります。私が公開しているチャートは全部自分で実践していて、オプションで検証してもプラスを維持しています。

この差は何でしょうか。

AIがなかった頃の私はプログラムも書けなかったので、Excelに手作業で検証結果を打ち込んでいました。年70回売買する戦術だと、1年分で3〜4時間かかります。だからバックテストは3年分が精一杯でした。

振り返ると、こういう流れで戦術を選んでいたことになります。

  1. 直近3〜5年の検証で、使えるものと使えないものを判断する
  2. 残った候補をオプションに当てはめる
  3. 成績のいいものに「〇〇大作戦」と名前をつけて紹介する

AIで検証し直した結果、ある意味これが正しかったと分かりました。

データが少なすぎる、来年も通用する保証はない。それはもっともです。でも今ワークしている(うまく機能している)ものを、今使う。これがチャートの正しい使い方です。

夏には夏服、冬には冬のコートを着る。それと同じなんですよね。

⚾ 「現役チャート分析」という考え方

そこで私は、テクニカル分析へのアンチテーゼとして「現役チャート分析」を提唱したいと思っています。私が勝手に作った言葉です。

いま一軍として使っているのは16〜20枚ほどです。メンバーには毎日、戦術シートとしてPDFで共有しています。

  • MACD Mk2
  • Zスコア(平均からどれだけ離れたか)… ここ1年のエース級
  • バンドウォーク … 地合いが変わってもほぼ通用する最強のチャート
  • RCIとGMMA … NT倍率(日経平均÷TOPIX)では6年以上ワーク

2020年以降だけでも、地合いは何度も変わってきました。

コロナの暴落。景気はボロボロなのに株価が上がる、不景気の株高。2022年のアメリカの利上げによる下落。2023年4月のバフェット来日からの上昇。そしてAIブームによる半導体株の急騰です。

2024年8月の植田ショックでは、日経VIが日中88ほどまで上がり、史上最高値をつけました。証拠金は過去の変動をもとに計算される方式なので、この記録が傷として残ります。証拠金は高止まりし、日経VIは30超えが1年以上続いています。

日経VIが18〜20だった時代のチャートを持ってきても、そうそうワークしないだろうというのは簡単に予測できますよね。

もし今年の秋相場で6月22日の73,800円あたりの高値を抜けなければ、横ばいか下落に入っているのかもしれません。

そうなると、上昇トレンドでワークしていたタイプは成績が落ちてくるかもしれません。一軍チャートが効かなくなるのはじわじわです。なので、この「現役チャート」がまだ現役なのか役目を終えたのかは、半年、1年スパンで判断していくことになります。

勝率が落ちてきたと感じたら、一軍と二軍を入れ替える。

✅ おわりに

チャートにはファンダメンタルズも需給も反映されます。何を拠り所にするかでいえば、チャートが一番優れているという私の考えは変わっていません。

意味がないのは、古いテクニカル分析を必死に勉強することと、古いチャートを長く検証することのほうです。

やるべきことは、今ワークしているチャートを見極めること。もしくは自分で作ること。そしてワークしている間にしっかり稼ぎ、ダメになったら乗り換えることです。

考え方は順張りと同じで、3年、5年という波を見つけて乗っていくイメージです。

あなたが使っているチャートは、今の地合いでも一軍でしょうか。長く使ううちに効かなくなったチャートがあれば、X(@J_kumagai)で教えてもらえると嬉しいです。

この記事の内容は、Substack でポッドキャストとしても配信しています。

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// MIN-LABO

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投資サロン「みんなの投資ラボ」では、戦術の考え方から、使うチャートの作り方、建て方・決済のルールまでを順を追って解説しています。熊谷の実ポジションやバックテストは、数日後に記録として共有しています。

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