01手口とは:JPXの「取引参加者別取引高」
大阪取引所で先物を売買するのは、取引所の会員である証券会社(取引参加者)です。個人や海外の投資家の注文も、どこかの証券会社を通して取引所に出されます。その証券会社ごとの取引高をまとめたものが手口です。日経平均先物そのものの仕組みは日経平均先物とはで解説しています。
手口と近いデータがいくつかあり、公表の時間と中身が違います。
| データ | 公表 | 中身 |
|---|---|---|
| 取引参加者別取引高(日次) | 毎営業日 17:45目処 | 証券会社ごとの取引高。売り買い合算。ナイト・日中、立会・J-NET別 |
| 取引参加者別取引高(月次) | 毎月第5営業日 15:30目安(前月分) | 証券会社ごとの取引高を売買別に集計 |
| 取引参加者別建玉残高一覧 | 毎週第1営業日 15:30目途 | 前週末の日中取引終了時点の、証券会社ごとの建玉残高 |
| 投資部門別取引状況 | 毎週第4営業日 15:30 | 海外投資家・個人など、投資家の種類ごとの売買 |
出所:日本取引所グループ「取引参加者別取引高」「取引参加者別建玉残高一覧」「投資部門別取引状況」(2026年10月時点)。祝日取引の分は、前営業日のナイト・セッションと合算して翌営業日に公表されます。
日次の手口は、以前は売り・買い別に公表されていました。大阪取引所は「手口から自社の取引が類推され、先回りされる」という市場参加者の指摘を受けて見直しを決め、2023年11月6日から売りと買いを合算した上位20社の公表に変わりました(楽天証券のお知らせより)。いま日次の手口から分かるのは「どの会社がどれだけ売買したか」までです。
02日中・夜間・J-NETの違い
日経225先物の取引時間は、日中が8:45〜15:45、夜間(ナイト・セッション)が17:00〜翌6:00です。大阪取引所では、夜間の開始から翌営業日の日中終了までが1つの「取引日」になります。たとえば取引日10月16日のナイト・セッションは、10月15日17時〜16日6時の取引です。
J-NET取引は、通常の板(立会)とは別の市場で、相手を決めて行う立会外の取引です。大口の売買や、現物との組み合わせ取引に使われます。成立すれば、建玉や証拠金の扱いは立会内の取引と同じです。なお日経225マイクロ先物はJ-NET取引の対象外です。
実際の数字で見てみます。取引日2026年10月16日のナイト・セッション、日経225先物12月限の手口の一部です。
| 証券会社(手口の表記) | 取引高 | うち立会 | J-NET(差) |
|---|---|---|---|
| ABNクリアリン証券 | 11,542 | 11,285 | 257 |
| ソシエテジェネラル証券 | 6,015 | 5,820 | 195 |
| バークレイズ証券 | 3,066 | 3,056 | 10 |
| ゴールドマン証券 | 1,653 | 1,326 | 327 |
| SBI証券 | 1,805 | 653 | 1,152 |
| 大和証券 | 103 | 0 | 103 |
単位:枚。出所:日本取引所グループの公表データ(株探ニュース「『日経225先物』手口情報(16日夜間)」、松井証券マーケット情報掲載)。J-NETの列は取引高から立会分を引いた値。
この例では、SBI証券の取引高の6割以上がJ-NETです。大和証券は全部がJ-NETでした。立会とJ-NETを合計した順位だけを見ると、板の上での売買の強さを読み違えることがあります。板の需給を知りたいときは立会の列を、大口の取引を知りたいときはJ-NETの列を見ます。
03限月ごとに見る理由
手口は限月ごとに公表されます。ふだんは期近(満期が一番近い限月)に取引が集中します。上の10月16日の例でも、12月限のABNクリアリン証券は11,542枚でしたが、2027年3月限は上位の会社でも52枚でした。
ところがSQが近づくと、期近を決済して次の限月に建て直すロールオーバーが増えます。このとき同じ会社が、期近と期先の両方で同じくらいの枚数を売買します。
例:メジャーSQの週に、A証券が12月限で8,000枚、3月限で7,800枚を売買していたとします(架空の数値)。期近だけを見ると「A証券が大きく動いた」と見えますが、実際は12月限の建玉を3月限へ移しただけかもしれません。期先の枚数が期近とほぼ同じなら、まずロールを疑います。
また日経225先物(ラージ)と日経225miniは別々に集計されます。1枚の大きさは10倍違うので、枚数をそのまま比べないようにします。
04海外証券会社の名前と見方
日経225先物の手口で上位に並ぶことが多いのは、海外の証券会社です。10月16日夜間の12月限では、立会の枚数で見るとABNクリアリン証券・ソシエテジェネラル証券・バークレイズ証券・ゴールドマン証券・JPモルガン証券が上位5社でした(J-NETを含む合計では、SBI証券がゴールドマン証券を上回ります)。ほかにもUBS証券、ビーオブエー証券、BNPパリバ証券、ドイツ証券、シティグループ証券などが手口に名前を出します(表記は手口データの略称です)。
見るときは、次の3点を前提にします。
- 1社の数字には多くの顧客の注文が混ざっている:手口は証券会社の単位で、ヘッジファンド・年金・事業会社など、その会社を通したすべての取引の合計です。手口の数字には自己売買と顧客の注文の区別も表示されていません。
- 日次は売り買い合算:取引高が多いことは「たくさん動いた」ことしか示しません。買い越しか売り越しかは、日次の手口だけでは判断できません。
- 会社ごとの「クセ」を決めつけない:「この会社が出てきたら上がる」といった読み方は、顧客の入れ替わりや戦略の変化ですぐに通用しなくなります。
海外投資家全体が買ったか売ったかを知りたいときは、手口ではなくJPXの投資部門別取引状況(週次)を使います。こちらは投資家の種類ごとに売りと買いが分かれています。カブラボのマーケットデータでも、投資部門別の動向を毎週判定しています。
05確認の手順と、オプション建玉との組み合わせ
毎日の確認は、次の順番で行うと迷いにくくなります。
- 17:45以降に、JPXの「取引参加者別取引高」でその日の日経225先物の手口を開く。
- 期近の限月で、上位の会社と枚数を書き出す。ナイト・日中、立会・J-NETは分けて記録する。
- 同じ会社の期先の限月の枚数を見て、ロールオーバーかどうかを確かめる。
- 前日・前週と比べて、急に枚数が増えた会社に印をつける。
- 週に一度、「取引参加者別建玉残高一覧」で、その会社の建玉残高が増えたか減ったかを確認する。
- オプションの手口と建玉を重ね、先物の売買がオプションのポジションとつながっていないかを見る。
6つ目が大切です。オプションを売っている会社は、相場が動くと先物でヘッジ(デルタヘッジ)をすることがあります。その場合、先物の手口に出る売買は「相場の方向への賭け」ではなく、オプションのリスク調整かもしれません。
例:日経平均が上がった日に、B証券が先物を大きく売買し、同じB証券がコールの建玉の厚い行使価格でも取引していたとします(架空の例)。先物だけを見ると方向の売買に見えますが、コールの売りのヘッジとして先物を買っている可能性もあります。オプション側の建玉の読み方は日経225オプションの建玉の見方で解説しています。証券会社の取引ツールには、日経225オプションの会員別の売り買い差引建玉(直近限月のATM付近、上位15社)を表示できるものもあります(SBI証券 HYPER SBI 2、2026年10月時点)。
06熊谷の見方:手口は「動いた人」を示すだけ
私は「みんなの投資ラボ」で配布しているSQ値分析レポートで、建玉と手口を使っています。その答え合わせから整理してきたことを紹介します。手口を見るときの経験則は親ページの「手口の見方」にもまとめています。
- 数字は「恐れ」や「動き」を示すが、行き先ではない。8月限では、安値の直後に建玉が増えてIVも上がったことから「下に警戒」と読みました。しかしSQ値は69,702円で、事前に本命と見た価格帯とは約4,700円の差がつきました。建玉は参加者が恐れる場所を示すもので、相場の行き先ではないと整理し直しました(8月限SQ振り返り)。手口も同じで、分かるのは「だれが動いたか」までです。
- 判断の基準は先に書いておく。8月17日の週は、事前に置いた判定条件のうち1つの読み方を誤っていました。基準を前もって書いていたので、食い違いに気づけました(8/17週 OP建玉分析)。いまは「この見立てが崩れる条件」も先に記録しています。
- 先物の売買には、オプションのヘッジが混ざる。機関投資家には、ATM付近のオプションを売り、先物でデルタヘッジする戦術があります(機関投資家の「完璧なヘッジ」)。先物の手口だけで方向を決めつけないのは、このためです。
- 日本株の売買は海外勢が中心。オプションを使う個人はごく少数という構造があります(丸腰で戦場に立つのはもうやめにしよう)。海外証券の手口に注目が集まるのは、この構造があるからです。
07よくある誤読
| よくある読み方 | 実際には |
|---|---|
| 取引高1位の海外勢が買っている | 日次の手口は売り買い合算です。1位は「一番多く売買した」というだけで、方向は分かりません。 |
| 期近で大きく動いた=新しい勝負 | 期先でも同じくらいの枚数があれば、ロールオーバーの可能性があります。とくにSQの週は要注意です。 |
| 手口の会社=その会社の判断 | 1社の数字には多くの顧客の注文が混ざっています。会社の相場観と同じではありません。 |
| 夜間の手口はその日の夜の取引 | 取引日○日のナイト・セッションは、前日の夕方から○日早朝までの取引です。 |
| 合計の順位だけ見ればよい | J-NETの大口取引で順位が変わることがあります。板の需給は立会の数字で見ます。 |
| 先物の手口だけで方向が分かる | オプションのヘッジで先物を売買していることがあります。オプションの建玉と手口もあわせて確認します。 |
08よくある質問
01日経225先物の手口とは何ですか?
日本取引所グループ(JPX)が毎営業日公表している「取引参加者別取引高」のことで、証券会社ごとに先物やオプションをどれだけ売買したかを示します。日経225先物では海外の証券会社の取引高が大きいため、海外勢の動きを探る手がかりとして使われます。
02手口はいつ、どこで見られますか?
JPXのサイトの「取引参加者別取引高」で、毎営業日17:45を目処に公表されます(2026年10月時点)。ナイト・セッションと日中取引、立会取引とJ-NET取引に分けて掲載されます。祝日取引の分は前営業日のナイト・セッションと合算され、翌営業日に公表されます。
03手口で海外勢の買い越し・売り越しは分かりますか?
日次の手口は2023年11月6日から売りと買いを合算した取引高になっているため、日次の数字だけでは買い越しか売り越しかは分かりません。売買別の数字は月次の取引参加者別取引高で、海外投資家全体の売り買いは週次の投資部門別取引状況で確認できます。
04J-NET取引とは何ですか?
大阪取引所の通常の板(立会)とは別の市場で、相手を決めて行う立会外の先物・オプション取引です。大口の売買などに使われ、成立した取引は建玉や証拠金の扱いが立会内と同じになります。手口では立会とJ-NETが分けて公表されるので、板の需給を見るときは立会の数字を使います。
05なぜ手口は限月ごとに見る必要があるのですか?
SQが近づくと、期近の限月を決済して次の限月に建て直すロールオーバーが増えるためです。期近だけを見ると大きな売買に見えても、期先で同じくらいの枚数を売買していれば、ポジションを移しただけの可能性があります。
06夜間の手口は、いつの取引ですか?
大阪取引所では、ナイト・セッションの開始から翌営業日の日中取引の終了までが1つの取引日です。そのため、取引日16日のナイト・セッションの手口は、15日17時から16日6時までの取引を指します。