01カバードコールの仕組み
カバードコールは「保有株」と「コールの売り」の組み合わせです。コールを売ると、買い手からプレミアム(オプションの代金)を先に受け取ります。その代わりに、買い手が権利を使ったら、行使価格で株を渡す義務を負います。
渡す株をすでに持っているので「カバード(備えがある)」と呼ばれます。株を持たずにコールだけを売る「裸売り」とは違い、株価がどれだけ上がっても、手持ちの株を渡せば義務を果たせます。
株価が上がると利益、下がると損失。配当は株主として受け取れる。
プレミアムを先に受け取る。株価が行使価格を超えると、行使価格で株を売る義務が生じる。
かぶオプの取引単位は、対象銘柄の売買単位です。多くの株は100株なので、100株の保有に対してコール1枚が基本の組み合わせになります。権利行使は取引最終日だけ(ヨーロピアンタイプ)なので、期中に突然株を持っていかれることはありません。
02損益の形を数字で見る
例として、株価3,000円の銘柄を100株持っているとします。この株価帯の行使価格は200円刻みなので、1つ上の行使価格3,200円のコールを1枚売ります。プレミアムは説明のための例として35円とします。
取引最終日の株価ごとに、株を持っているだけの場合と比べると次のようになります(手数料・税金は除く)。
| 取引最終日の株価 | 株を持っているだけ | カバードコール |
|---|---|---|
| 2,700円 | −30,000円 | −26,500円 |
| 2,900円 | −10,000円 | −6,500円 |
| 3,000円 | ±0円 | +3,500円 |
| 3,200円 | +20,000円 | +23,500円 |
| 3,400円 | +40,000円 | +23,500円 |
| 3,600円 | +60,000円 | +23,500円 |
株価3,000円・100株保有・行使価格3,200円のコールを35円で1枚売った場合。プレミアムは説明用の例で、実際の水準は銘柄・時期・残り日数で大きく変わります。
- 損益分岐は2,965円です。受け取った35円の分だけ、下落に対するクッションになります。
- 利益の上限は23,500円です。株価が3,200円を超えると株は3,200円で売れるので、それ以上は増えません。実質の売却価格は3,235円です。
- 2,700円まで下がると、株だけなら−30,000円のところ、カバードコールでも−26,500円です。下落の損失はプレミアム分しか減りません。
03カバードコールのやり方(手順)
- 保有株がかぶオプの対象か確認する:対象は取引所が選んだ銘柄だけです。実際に売買しやすいのは、マーケットメイカーが常に気配を出している対象銘柄(2026年8月から50銘柄)です。
- 株数を確認する:100株単位の銘柄なら、100株ごとにコール1枚です。150株なら1枚までにします。
- 限月を選ぶ:取引最終日は各限月の第2金曜日の前営業日(通常は第2木曜日)です。
- 行使価格を選ぶ:「この価格なら売ってもいい」と思える価格にします(下の表)。
- コールを新規で売る:気配を見て指値で注文します。取引時間は9:00〜11:30と12:30〜15:40で、夜間取引はありません。
- 取引最終日を待つ:途中で買い戻して終えることもできます。保有株だけを先に売ると、コールが裸売りに変わるので注意します。
限月の選び方
かぶオプの限月は、直近2か月と、3・6・9・12月のうち直近2か月です。ただし実際に売買が多いのはほぼ当月限で、まずは最も近い限月から考えるのが現実的です。期間が短いほど受け取る金額は小さくなりますが、1か月ごとに「売るか・続けるか」を見直せます。
行使価格の選び方
| 株価に近い(ATM) | 株価より上(OTM) | 株価よりかなり上(遠いOTM) | |
|---|---|---|---|
| 例(株価3,000円) | 行使価格3,000円 | 行使価格3,200円 | 行使価格3,400円 |
| 受け取るプレミアム | 大きい | 中くらい | 小さい |
| 株が売れる可能性 | 高い | 中くらい | 低い |
| 値上がり益の余地 | ほぼない | 行使価格まで | 大きい |
| 向いている考え方 | 今の値段で売ってもいい | 少し上がったら売りたい | 基本は持ち続けたい |
大事なのは、プレミアムの大きさではなく「その価格で本当に売っていいか」です。売りたくない株で行使価格を近くにすると、上昇局面で手放して後悔しやすくなります。
取引できる証券会社
2026年6月時点で、個人がかぶオプを取引できる主な証券会社はインタラクティブ・ブローカーズ証券、光世証券、moomoo証券の3社です。SBI証券・楽天証券・マネックス証券では取り扱いがありません。コールの売りには証拠金が必要で、保有株の扱いも含めて必要な額は口座を開く証券会社で確認してください。各社の違いはかぶオプの証券会社でまとめます。
04権利行使されたときの流れ
カバードコールの結果は、取引最終日に決まります。判定に使われるのは、その日の対象銘柄の終値と行使価格の関係です。
買い戻していないコールは、権利放棄をしない限り自動で権利行使されます。保有株は行使価格で売られ、権利行使日から4営業日目に株と代金の受け渡しが行われます。
コールは行使されずに消滅します。株は手元に残り、受け取ったプレミアムもそのままです。次の限月で、またコールを売ることができます。
まだ株を手放したくない場合は、取引最終日までにコールを買い戻せば行使を避けられます。ただし株価が上がっているときはコールの値段も上がっているので、買い戻しは損失になります。行使されても困らない行使価格を最初に選んでおくのが、いちばんの対策です。
05メリットとデメリット
| 内容 | |
|---|---|
| メリット1 | 保有株から、配当とは別にプレミアムを受け取れる。株価が横ばいでも結果が出る |
| メリット2 | 「売りたい価格」を先に決めることになり、売り時の迷いが減る |
| メリット3 | 判定は取引最終日だけなので、期中の値動きを追い続けなくてよい |
| デメリット1 | 上昇時の利益が限られる。行使価格を大きく超えて上がっても、売れる価格は行使価格まで |
| デメリット2 | 下落リスクは残る。下がった分の損失のうち、埋められるのはプレミアムの分だけ |
| デメリット3 | 対象銘柄が限られ、取り扱う証券会社も少ない。マーケットメイカー対象外の銘柄は売買しにくい |
とくにデメリット2は誤解されやすい点です。カバードコールは「守りの戦略」と紹介されることもありますが、下落への備えとしては力不足です。下落に備えたいなら、プットを買うプロテクティブ・プットのほうが役割に合っています。
06ターゲットバイイング・ホイール戦略との関係
カバードコールは、プット売りによるターゲットバイイングと対になる使い方です。
- ターゲットバイイング:買いたい価格でプットを売り、お金をもらって「買いの指値」を置く
- カバードコール:売りたい価格でコールを売り、お金をもらって「売りの指値」を置く
この2つを交互に回すのがホイール戦略です。プット売りで株を取得し、取得した株でカバードコールを行い、株が売れたらまたプット売りに戻ります。どの局面でもプレミアムを受け取れる一方、株を持っている期間の下落リスクは常にあります。ターゲットバイイングの具体例はかぶオプとはで解説しています。
07熊谷の見方
私が記事で書いてきたことのうち、カバードコールに関わる考え方をまとめます。
- 投資家と時間の関係には「敵にする」「受け取る」「売る」があります。オプションの値段は本質的価値と時間価値でできていて、売り手は時間を売る立場です。現物株とオプションを組み合わせると、株を持ちながら時間価値を受け取る形になります(プロは90日で評価される。でも我々には3650日ある)。
- かぶオプは取引量の都合で、動いているのがほぼ当月限だけです。期限が自動的に決まり、「いつまで」を意識する癖がつくことも投資に効くと考えています(ナンピン癖のある人ほど、実は救われるという話)。
- 私のチャートの勝率は約6割で、外れる前提で戦術を組んでいます。期限があるオプションは、時間を味方にできる商品だと位置づけています(「明日、上がるか下がるか」を当てにいく人は、たぶん一生勝てません)。
- マーケットメイカー対象が50銘柄に増えても、株価が高すぎる・安すぎる銘柄を除くと、実際に使えるのは約35銘柄だと見ています(お金を貰って指値できる「かぶオプ」が、8月3日からさらに強くなるぞ!)。
私自身は、かぶオプを「好きな銘柄を当てにいく投資」ではなく、決めた価格で淡々とプレミアムを受け取る仕組みとして使っています。カバードコールも同じで、まず「いくらなら売っていいか」を決めることが出発点です。
08よくある質問
01カバードコールとは何ですか?
カバードコールとは、保有している株に対してコール(決めた価格で買う権利)を売り、プレミアムを受け取る方法です。取引最終日に株価が行使価格を上回っていれば行使価格で株が売れ、下回っていれば株は手元に残ります。どちらの場合も、受け取ったプレミアムはそのまま残ります。
02日本株でカバードコールはできますか?
できます。大阪取引所の有価証券オプション「かぶオプ」の対象銘柄なら、保有株に対してコールを売る形で組めます。取引単位は対象銘柄の売買単位なので、100株単位の銘柄なら100株に対してコール1枚です。2026年6月時点で取り扱う主な証券会社はインタラクティブ・ブローカーズ証券、光世証券、moomoo証券の3社です。
03カバードコールのデメリットは何ですか?
主なデメリットは2つです。1つは、株価が行使価格を大きく超えて上がっても、行使価格でしか売れず値上がり益が限られることです。もう1つは、株価が下がった場合の損失がほぼそのまま残ることで、埋められるのは受け取ったプレミアムの分だけです。
04権利行使されたらどうなりますか?
かぶオプでは、取引最終日に株価が行使価格を上回っていて、コールを買い戻していなければ、権利放棄をしない限り自動で権利行使されます。保有株は行使価格で売られ、権利行使日から4営業日目に株と代金の受け渡しが行われます。手放したくない場合は、取引最終日までにコールを買い戻します。
05行使価格はどう選べばいいですか?
「この価格なら売ってもいい」と思える価格を選びます。株価に近い行使価格ほど受け取るプレミアムは大きくなりますが、株が売れる可能性も高くなります。株価より離れた行使価格は、プレミアムが小さい代わりに値上がり益の余地が残ります。
06ホイール戦略とは何ですか?
プット売りで株を取得し、取得した株でカバードコールを行い、株が売れたらまたプット売りに戻る、という繰り返しです。プット売りは「お金をもらって買いの指値」、カバードコールは「お金をもらって売りの指値」にあたります。株を持っている期間は、株価下落のリスクを負います。